2016 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロプリンティングと断面分析の深化による次世代燃料電池電極創製基盤の確立
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15H03932
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
津島 将司 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30323794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 崇弘 大阪大学, 工学研究科, 助教 (90711630)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 燃料電池 / 物質輸送 / マイクロプリンティング / 断面分析 / ナノマイクロ構造制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,固体高分子形燃料電池において電極触媒層と微細孔層を一括して扱い,連結した輸送経路をマイクロプリンティング技術により3次元構造構築する手法の確立を目指している.さらに,電極触媒層内のイオン,反応ガス,電子の輸送経路を把握するために,電極内高分子アイオノマーの空間分布を可視化する断面分析手法を開発し,次世代燃料電池電極創製のための基盤技術を確立することを目的としている.本年度は,これまでの成果を踏まえ,電極触媒層について,マイクロノズルより吐出可能な電極触媒層懸濁液の調合ならびに吐出条件の検討を行った.塗工間隔を250umと500umとしたマイクロ溝を有する電極触媒層の作製に成功し,塗工回数を調整することで触媒担持量の制御が可能であることを示した.その上で,塗工後の電極触媒層を電解質膜へ熱転写する過程においてもマイクロ溝の構造が保持できることを確認し,作製したマイクロ溝を有する膜電極複合体を用いて固体高分子形燃料電池における発電実験を実施した.その結果,塗工間隔250umの電極触媒層が塗工間隔500umの電極触媒層と比較して良好な発電特性を有することを示した.さらに,従来手法であるドクターブレード法により形成された電極触媒層と比較し,白金重量当たりの電池出力が大きい発電領域において,塗工間隔250umの電極触媒層において良好な発電特性が示されることを明らかにした.断面分析技術については,イオンミリング法で膜電極複合体の断面を形成した後に,集束イオンビーム(FIB)装置でガリウムイオン照射を行い,イオンビーム照射前後の触媒層平滑断面の画像を比較することで,電極触媒層中アイオノマー分布を解析する手法を開発した.FIB加工において,照射エネルギー量を調整することで,電極触媒層中のアイオノマーについて優先的除去が可能であることを示す実験結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
固体高分子形燃料電池の電極触媒層と微細孔層について,連通した輸送経路形成とそのための3次元構造構築に向けて,電極触媒層と微細孔層をマイクロプリンティング技術により構築するための研究が当初の計画以上に順調に進展している.電極懸濁液の混合・解砕条件ならびに極性分散剤の影響に加えて,マイクロノズルヘッドに搭載されたピエゾ素子に印加する電圧条件の最適化など,研究開始当初は多くの課題が予想されたが,個々の課題について,インク物性や吐出挙動などを計測・観察し,着実に検討することで,開始2年目ですでに,マイクロ溝を有する電極触媒層の作製に成功した.さらに,異なる構造を有するマイクロ溝付電極において,従来手法を上回る電池性能が示されるなど,研究提案の実証に至る成果が得られている.断面分析技術についても,イオンミリング法で膜電極複合体の断面を形成した後に,集束イオンビーム(FIB)装置でガリウムイオン照射を行い,イオンビーム照射前後の触媒層平滑断面の画像を比較することで,電極触媒層中アイオノマー分布を解析する新たな手法を開発した.FIB加工において,照射エネルギー量を調整することで,電極触媒層中のアイオノマーについて優先的除去が可能であることを示す実験結果が得られており,今後,より詳細な解析を進めることで,新たな断面分析技術として確立できる状況にある.これより,研究提案当初の実施計画を上回り進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究開発2年目において,マイクロ溝を有する電極触媒層の作製に成功し,発電特性の向上が認められたことから,電極触媒層中の酸素と生成水の物質輸送解析にもとづく最適化構造の検討を行う.特に,マイクロ溝の構造特性が酸素と生成水の輸送に及ぼす影響について検討し,マイクロプリンティング技術により作製される電極触媒層や微細孔層がセル性能に及ぼす影響を基礎的に明らかにする.断面分析技術については,イオンミリング法と集束イオンビーム(FIB)加工法を用いた二段階加工法と取得断面の画像処理により,触媒層中のアイオノマーを選択除去する手法の開発が進展していることを踏まえ,解析技術のさらなる高度化を進める.特に,電極触媒層における,アイオノマー,白金担持カーボン,空隙の空間占有割合について重量法との比較を踏まえた定量的な検討を行う.アイオノマーについては,電極触媒層における厚さ方向分布ならびに白金担持カーボンを被覆する特性厚さの算出についての検討を行う.さらに,マイクロプリンティング技術と断面分析技術を統合的に活用することで,電極内に形成される反応ガス,イオン,電子の輸送経路が電極作製条件によりどのように変化し,それらが燃料電池性能にどのような影響を及ぼすのかについて基礎的な検討を進める.特に,アイオノマーとカーボンの質量比(I/C)などの触媒層作製条件が多孔質電極構造に与える影響を調べることで,これまでに十分な分析が進んでいない燃料電池電極の作製工程についての検討を進め,次世代燃料電池電極創製の基盤技術として確立し,電池性能向上に向けた研究開発についても推進する.
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Research Products
(6 results)