2016 Fiscal Year Annual Research Report
超解像ベクトリアル偏光干渉レーザ顕微鏡による微粒子イメージング
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15H03945
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
江上 力 静岡大学, 工学部, 教授 (70262798)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 計測工学 / 微粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は微粒子の表面および内部のナノ・サブミクロン領域での3次元構造・薬理特性解析のため,安価な連続発振レーザを用いたベクトリアル偏光干渉非線形レーザ顕微鏡の開発を目指し、超解像タイムラプスイメージング法を提案するものである。具体的には助成4年間で、ナノ・サブミクロン微粒子計測に特化した、ベクトリアル偏光干渉共焦点顕微鏡の構築と実際に作製したシステムを用いた特性評価を実験・理論両面から実施する。 昨年度は微粒子から顕微計測された微小散乱信号にジョーンズマトリックスモデルを適用し、微粒子の異方性散乱について実験値と理論値とを比較・解析する基礎実験を行った。その結果を踏まえて、今年度は顕微システムのCTF(Contrast Transfer Function)値のさらなる向上に取り組んできた。その結果、入射光強度の応じて非線形的にCTFを向上させることが可能となり結果、見かけの空間分解能も向上させることができた。 昨年度得られた成果をスペイン(バルセロナ)で開催されたナノテクノロジー・ナノサイエンスに関する国際会議(Applied Nanotechnology and Nanoscience International Conference 2016)と福岡で開催された電子と光を利用する有機化学に関する国際会議(KJF International Conference on Organic Materials for Electronics and Photonics 2016)で発表し、ナノテクノロジー分野の研究者や有機高分子化学・有機薬理化学分野の研究者に強い関心を示して頂いた。当方の開発を目指す顕微システムは様々な光化学分析装置等の領域へも応用展開出来ることが改めて再確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、共焦点顕微計測された微小散乱信号にジョーンズマトリックスモデルを適用し、測定値から得られる異方性パラメータ(散乱電界強度、主軸傾き、および主軸・副軸間での位相差)等の理論解を計算する逆問題に取り組んだ。さらに実際の偏光干渉ベクトリアル共焦点非線形顕微鏡の開発にも取り組んだ。光源に連続発振低パワーレーザを使用するため、測定される散乱信号はピコアンペア程度となる。これをロックインアンプを用いて増幅・検出するため、内部マトリックス構造の解析においては逆問題計算のアルゴリズム構築が非常に重要となる。実際に、逆問題での解を収束させるためのアルゴリズム構築に多大な時間を要してしまった。そのため、昨年度の報告書にも記したが、実際に予定したほどの詳細な解の解析ができず、今年度への課題として残ってしまった。その結果、今年度の研究も若干の遅れを伴っている。それでも昨年度の有機異方性フィルムでの異方性解析に引き続き、今年度は実際に微粒子表面・内部において、集光ビームの横モード中心部でのみのピンポイント異方性解析にある程度目処が立ち、これについての成果を論文投稿準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
実施計画書にも記載したが、本年度はさらに照射励起光を多波長化した、システム構築に取り組む。複数波長をシステムに導入するため、ベクトリアル干渉計における各種収差の考慮が十分になされているかが重要なファクターとなる。また、等方性バックグラウンド領域からの散乱光プレスキャンにおいても広い導入波長領域において、ベクトル差分ゼロの条件をいかに機械的に決定することができるかがキーとなる。 さらに、これまでのシステムではDDS微粒子に対して、数百ナノメートルでのサンプル領域をスキャンするために、三次元ピエゾステージを利用してきた。今年度は同システム中にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを組み込んで、さらなる微小領域でのラスタースキャンを行うことのできるシステムを開発する。昨年度までの研究にて光源のコヒーレンスの良さが逆にベクトリアル干渉に悪影響を及ぼしてしまうことが判明していたため、コヒーレンスの低いレーザ光源を用いて差分ベクトルゼロ推定を実施してきたが逆に、MEMSミラーによって拡大ラスタースキャンを実施するためには、スキャンによる光学距離の僅かな変化が差分信号に大きく影響してしまう。そのため、使用光源には絶対的なコヒーレンスの良さが要求されてしまう。上記の二つの条件はトレードオフの関係にあり、どの程度のコヒーレンス(縦モード幅)が要求されるかも重要なファクターとなる。これを多波長レーザ光源に対して満たす必要があるため、困難が予想される。
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Research Products
(4 results)