2016 Fiscal Year Annual Research Report
60000 rpm,50 kWの出力を持つ大容量高速ベアリングレスモータの開発
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15H03955
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
竹本 真紹 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (80313336)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 省エネルギー / 省資源 / 高速回転 / 大容量 / 磁気浮上 / ベアリングレスモータ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,まず,試作を行う前に,昨年度に実施した60000 rpm,50 kWの大容量高速ベアリングレスモータの構造及び設計を改めて見直し,損失密度に基づいた構造最適化をさらに進化させることで,15.5 kW/Lという極めて高い出力密度を達成できる新設計を実現した。昨年度に実施した設計でも,11.16 kW/Lと十分に高い出力密度であったが,損失密度に基づいた構造最適化手法をさらに進化させることで,38.9%も出力密度を向上した。一方,損失密度に関しては,599.4 W/Lと比較的小さな値に抑制できており,昨年度からの増加は8.4%と小さい。このことから,平成28年度に改良した構造最適化手法は,損失密度をほとんど増加させずに,出力密度のみを増加できる有効な手法である。そして,599.4 W/Lという損失密度は,試作機の新設計と一緒に改良設計した冷却システムを用いることで,十分に冷却可能な値である。加えて,軸支持力特性についても,新設計は71.9 Nの軸支持力を発生可能であり,昨年度の設計に比べて,38.2%も軸支持力を増加できており,十分な軸支持力を発生できる。 そして,新設計に基づいて,60000 rpm,50 kWの大容量高速ベアリングレスモータの試作機を実際に製作した。この時,回転子の回転バランスと回転子に装着するギャップセンサターゲットの真円度と同心度が高精度になるように回転子製作を工夫した。これらの精度が低いと,軸支持に必要な軸支持入力電力の増加に直結するため,高効率,すなわち,低損失なベアリングレスモータを製作するには,非常に重要なポイントである。 さらに,製作した試作機と前年度に製作したドライブシステムを組み合わせることで,安定な磁気浮上運転を実現し,高速回転において安定な磁気浮上運転を実現するのに欠かせない制御システムの構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究実施計画は,(1) 60000 rpm,50 kWの大容量高速ベアリングレスモータの試作,(2) 製作した試作機による安定な高速回転運転の実現と負荷試験による提案するベアリングレスモータや設計手法の有効性の検証,の2つであった。 そして,まず,(1)に関してであるが,当初の計画通り,今年度実施した新設計に基づいて,試作機を製作した。この試作において,大きな研究成果は,昨年度提案した損失密度に基づいた構造最適化手法を,今年度さらに進化させることができ,15.5 kW/Lと極めて高い出力密度を達成できる新設計を実現した点である。この構造最適化手法の進化という研究に関しては,当初の研究実施計画の中では予定していなかった内容であるが,試作のために,昨年度に実施した試作機の設計を見直す過程において,構造最適化手法を改良できることに気づき,急遽実施した研究である。この研究自体は,平成29年度に予定している試作機の改良設計を先取りしたものであり,研究全体を大きく進捗させる成果である。 次に,(2)に関してであるが,製作した試作機に前年度に製作したドライブシステムを組み合わせることで実験を行った。そして,同定した試作機の詳細なパラメータを用いて,研究代表者が提案している仮想の座標系と電流の非干渉化制御を用いた電流制御システムを構築し,高速回転においても安定な軸支持制御を実現するのに欠かせない制御システムを構築した。しかし,高速回転下において,負荷試験を実施し,提案するベアリングレスモータを検証する実験に関しては,先に述べた構造最適化手法の改良に時間がとられてしまい,未達となっている。しかし,構造最適化手法の改良は平成29年度に予定していた研究内容を先取りしたものであり,研究全体としての進捗は計画通りといえる。 したがって,研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
・実測した試作機の運転特性と冷却性能に基づいた試作機の改良およびドライブシステムの一層の高スイッチング化によるさらなる低損失化の実施 まず,最初に,平成28年度までに製作した試作機およびドライブシステムを用いて負荷試験を実施する。そして,60000 rpmという高速回転における大容量高速試作機の運転性能と冷却装置によるモータ内の各所の冷却性能を詳細に測定する。さらに,測定結果と解析結果を比較・検証することで,提案構造のさらなる低損失化の再検討を実施し,再検討の結果に基づいて試作機に改良を施す。 加えて,試作機は60000 rpmという高速で回転させるために,低インダクタンスとなっていることから,インバータのスイッチングによるリプル電流が通常の回転速度で回転させる一般的なモータに比べて大きくなる。この結果,電流リプルの増加によりスイッチング成分の鉄損が増大し,その分,発熱が大きくなる。そこで,この電流リプルに起因したスイッチング成分の鉄損を一層抑制するために,これまでに製作したドライブシステムに改良を加え,さらなる高スイッチング化を図る。 このような試作機およびドライブシステムに改良を施すことで,低損失な60000 rpm,50 kWの大容量高速ベアリングレスモータを世界に先駆けて実現し,提案構造と設計手法の有効性を実証する。
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Research Products
(2 results)