2016 Fiscal Year Annual Research Report
高速堆積法によるMEMS応用に向けたサブミリ厚磁石膜の創製と微細加工
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15H03978
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中野 正基 長崎大学, 工学研究科, 教授 (20274623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福永 博俊 長崎大学, 工学研究科, 教授 (10136533)
板倉 賢 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (20203078)
柳井 武志 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (30404239)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 厚膜磁石 / MEMS / PLD / 微細加工 / Nd-Fe-B / 保磁力 / 残留磁気分極 / 密着力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は,2015年度に達成したSi基板上へのNd-Fe-B系磁石膜の100 μm厚以上の厚膜化に対し,その磁気特性の向上を目指した。その際,Si基板と同様,MEMS用基板として用いられるガラス基板やNd-Fe-B系磁石に比べ異方性磁界の大きなPr-Fe-B系厚膜磁石にも着目した。加えて,2015年度に試みた「ダイシング加工」や「スクラッチ試験」以外に「溝加工したSiやガラス基板への成膜」,「ウエットエッチング」ならびに「ガラス基板上のNd-Fe-B系厚膜磁石に対するマイクロ着磁」に取り組み,よりMEMS応用に向けた取り組みを進めた。具体的な結果を述べる。 (1)Si基板上にNd-rich Nd-Fe-B系下地層を用いた際,Nd含有量15 at.%程度の試料の厚さを100 μmを超える範囲で,破壊現象無しに実現した。既報の下地層を施さずに同程度の厚みの試料をSi基板上に直接成膜した結果に比べ,大幅にNd含有量を低減でき,(BH)maxも約10 kJ/m3向上した。更に,J-Hループのニックや2段化は生じず,角型性の良い減磁曲線を再現性良く得られることも明らかとなった。(2)ガラス基板上に膜厚100 μm程度のPr-Fe-B系厚膜磁石を作製した際, 14 at.%程度まで希土類含有量(NdもしくはPr)を低減でき,その結果,等方性Pr-Fe-B系厚膜磁石の磁気特性として,Hc : 954 kA/m,Jr : 0.7 T,(BH)max : 70 kJ/m3といった優れた磁気特性を実現できることを明らかにした。この結果より,Si基板上では試料の破壊などが生じ作製が困難であった「100 μm以上の厚手化」と「約70 kJ/m3の高(BH)max」を同時に達成できることを示した。次に,溝加工(幅100 μm,深さ50 μm)を施したガラス基板上に,上記の実験結果を踏まえ,100 μm厚以上の成膜が可能な条件でPr-Fe-B系厚膜磁石を作製し,磁気特性の劣化なしに研磨加工できる事を確認し,更にその試料に対しマイクロ着磁が可能であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度における本研究の目的は,2015年度に本研究の資金援助を受けて実現した「高速PLD(Pulsed Laser Deposition)法」によるSi基板上へのNd-Fe-B系磁石膜の100 μm厚以上の厚膜化に対し,その磁気特性の向上であった。その結果,Nd-rich Nd-Fe-B系下地層を用いた際,Nd含有量15 at.%程度の試料の厚さを100 μmを超える範囲で,破壊現象無しに実現し,既報の下地層を施さずに同程度の厚みの試料をSi基板上に直接成膜した結果に比べ,大幅にNd含有量を低減でき,(BH)maxも約10 kJ/m3向上した。加えて,ガラス基板上(将来的にはガラス下地層の利用)においても, そのい磁気特性の向上を確認した。更に,厚膜磁石のMEMS応用の基礎検討として,「ウエットエッチング」ならびに「ガラス基板上のNd-Fe-B系厚膜磁石に対するマイクロ着磁」に取り組んだ。これらの結果は,IF付き学術論文に投稿受理されるとともに,複数の国内会議や国際会議(招待講演含む)にて発表している。 上記の内容が示すように,当初の目的をほぼ満足した内容となっているため,概ね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針として,2016年度に構築した成膜装置を利用した「Si基板上への異方性厚膜磁石の開発」や「ガラス下地層を利用したSi基板上等方性厚膜磁石の磁気特性の向上」を目指すとともに,具現化したデバイスのプロトタイプの実現も図る予定である。
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Research Products
(30 results)