2015 Fiscal Year Annual Research Report
ダイヤモンド超高機能化のための極低濃度不純物制御に関する研究
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15H03980
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
寺地 徳之 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主幹研究員 (50332747)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 電子・電気材料 / 結晶成長 / ダイヤモンド / 不純物制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究項目を「超高純度結晶成長」と「ppbレベルでのドナー/アクセプタドーピング」の2つに分けて実施している。 前者については、H27年度は、ダイヤモンド中のカラーセンタとしては代表的な、NVセンタ(窒素空孔複合欠陥)とSiVセンタ(シリコン空孔複合欠陥)の評価から始めた。これらカラーセンタの数密度を見積もり、結晶の純度を評価した。成長直後のダイヤモンド薄膜においては、これらの発光センターは全く観測されなかった。これは、他の研究機関で得られているダイヤモンドと比べて、本研究で得られる結晶の純度が格段に高いことを意味している。更に進めて、この高純度ダイヤモンドへのイオン注入と熱処理を行ったところ、注入イオン以外の不純物を起源とするカラーセンタも同時に観測された。この結果は、カラーセンタが見えない場合であっても、その不純物が結晶中に存在する可能性がある事、またイオン注入や熱処理が不純物をカラーセンタに変えるための可視化プロセスとして有効である事を意味している。本年度の研究を通して、申請者が成長した高純度ダイヤモンド中に存在するSiVセンタの数密度は、0.1-3pptである事が分かった。 後者については、H27年度は、CVD中の微量ドーピングによる単一NVセンタの形成を行った。ダイヤモンドの原料ガスであるメタンのガス流量に対して、窒素を6ppm混入させてダイヤモンド成長を行った。その結果、結晶中には5-10ppbの窒素がダイヤモンド結晶の置換位置に取り込まれることが分かった。また置換位置窒素の数とNVセンタの数の割合についても見積もることができた。本研究の場合は、1個のNVセンタに対して、200個の置換位置窒素が存在することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中心課題である「結晶の高純度化」に留まらず、「結晶の高品質化」を図りながら成長条件の最適化を行った。その結果、「酸素を高濃度に添加する」という、新しい成長条件を見出した。転位周辺には空孔が形成されやすいため、バックグラウンドとなるカラーセンタの低減には転位の低減が不可欠である。本研究では、酸素添加成長条件を適用する事で、転位密度を大幅に低減させることに成功した。その結果、共焦点蛍光顕微鏡を用いて、比較的容易に本質的(結晶欠陥に依存しない)なカラーセンタの検出、即ち不純物濃度を見積もることができた。 カラーセンタであるNVセンタの微量濃度制御については、窒素ガスを低濃度に供給する必要がある。本研究では、原料ガスであるメタンに含まれている窒素不純物をカラーセンタ形成に積極的に用いた。具体的には、メタン中の窒素不純物量を事前に評価しておき、ガス純化器を含むガス供給系を構築する事で、メタンガスに対してppbからppmに渡る極微量域で窒素濃度制御を行った。結果として、(a)ガス中の窒素、(b)ダイヤモンド中の窒素、(c)ダイヤモンド中のNVセンタ(カラーセンタ)のそれぞれに対して、相対比を見積もることが出来た。この相対比は、次に実施する極微量ドーピングにおいて最も基礎的なパラメータである。これを初年度で得られたのは、意義が大きい。 これらの成果については、2件の査読付き国際論文誌(オリジナル論文とレビュー論文)として出版された。そのうちのレビュー論文については、Editorの推薦によりFeature Articleとして選ばれ、論文中の図が冊子のカバーに用いられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に実施した成長条件の最適化により、カラーセンタが結晶中に非意図的に形成されない、ホワイトキャンバスとしてのダイヤモンド結晶の成長に目途がついた。次に実施すべきは、極微量ドーピングによるカラーセンタの数密度制御である。加えて、電荷安定性に関する評価を実施し、その制御法を確立する。この電荷安定性は、カラーセンタを操作可能な電子スピンとして用いる場合に、極めて重要となる。例えばNVセンタの場合は、負に帯電することで初めて、電子スピン制御が可能となる。窒素濃度と窒素/NVセンタの数密度比についても、本年度の研究で明らかとなった。したがって次年度以降は、窒素やリンといったドナーを、カラーセンタを形成する不純物と一緒に極微量ドーピングすることで、電荷安定性に優れたカラーセンタの形成を目指す。
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Research Products
(32 results)
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[Journal Article] Fluorescence Polarization Switching from a Single Silicon Vacancy Colour Centre in Diamond2015
Author(s)
Yan Liu, Gengxu Chen, Youying Rong, Liam Paul McGuinness, Fedor Jelezko, Syuto Tamura, Takashi Tanii, Tokuyuki Teraji, Shinobu Onoda, Takeshi Ohshima, Junichi Isoya, Takahiro Shinada, E Wu, and Heping Zeng
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Journal Title
Sci. Rep.
Volume: 5
Pages: 12244 1-9
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Homoepitaxial diamond film growth: High purity, high crystalline quality,isotopic enrichment, and single color center formation2015
Author(s)
Tokuyuki Teraji, Takashi Yamamoto, Kenji Watanabe, Yasuo Koide, Junichi Isoya, Shinobu Onoda, Takeshi Ohshima, Lachlan J. Rogers, Fedor Jelezko, Philipp Neumann, Jörg Wrachtrup, and Satoshi Koizumi
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Journal Title
Phys. Status Solidi A
Volume: 212
Pages: 2365-2384
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Investigation of the silicon vacancy color center for quantum key distribution2015
Author(s)
Yan Liu, Petr Siyushev, Youying Rong, Botao Wu, Liam Paul McGuinness, Fedor Jelezko, Syuto Tamura, Takashi Tanii, Tokuyuki Teraji, Shinobu Onoda, Takeshi Ohshima, Junichi Isoya, Takahiro Shinada, Heping Zeng, and E Wu
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Journal Title
Opt. Exp.
Volume: 23
Pages: 32961-32967
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] NV Centers in Diamond Used for Detection of Single Ion Track2015
Author(s)
Moriyoshi Haruyama, Shinobu Onoda, Tokuyuki Teraji, Junichi Isoya, Wataru Kada, Takeshi Ohshima, Osamu Hanaizumi
Organizer
The 11th Intrernational Workshop on Radiation Effects on Semicoductor Devices for Space Applications (11th RASEDA)
Place of Presentation
City Performing Arts Center, Kiryu, Gunnma, Japan
Year and Date
2015-11-12
Int'l Joint Research
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[Presentation] Diamond surface fluorescence for device sensing2015
Author(s)
Masafumi Inaba, Hayate Yamano, Kanami Kato, Taisuke Kageura, M. Shibata, Shinobu Onoda, Tokuyuki Teraji, Junichi Isoya,Takashi Tanii, Hiroshi Kawarada
Organizer
Diamond surface fluorescence for device sensing
Place of Presentation
Kagawa International Conference Hall, Takamatsu, Japan
Year and Date
2015-08-05
Int'l Joint Research
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