2015 Fiscal Year Annual Research Report
液晶溶媒を用いた高移動度有機半導体単結晶薄膜の液相エピタキシャル成長
Project/Area Number |
15H03982
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤掛 英夫 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20643331)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石鍋 隆宏 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30361132)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 可溶性有機半導体 / 液晶溶液 / 単結晶薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
今後の情報化社会を先導するフレキシブルエレクトロニクスを構築するたるためには、真空成膜でなく塗布印刷が可能で柔軟な高移動度有機半導体が必要となる。本研究は、分子配向性の液晶溶媒と高分子配向膜を用いて、高移動度有機半導体薄膜の単結晶方位の制御技術を構築して薄膜トランジスタに応用することを目的とする。初年度は、ネマチック液晶と可溶性有機半導体の溶液を用いた結晶の析出制御に取り組んだ。 最初に、液晶・有機半導体溶液が結晶方位に及ぼす影響を確認するため、ラビング配向処理済みのポリイミド配向膜で溶液を封じたセル構造を作製した。ここでは有機半導体が加熱溶解した溶液セルを冷却して、過飽和にすることにより結晶析出を促進した。実験の結果、数mmに達する単結晶薄膜が析出した。これらの単結晶の屈折率や紫外線偏光吸収を測定したところ、明確な異方性が認められた。そこで、X線による面外・面内回折測定を行ったところ、細長い分子軸は基板に垂直であった。さらに偏光ラマン散乱測定により、アルキル鎖はラビング方向(液晶配向)に近い方向に配向していることが判明した。 次に、加熱型スピンコーターを用いて、液晶・有機半導体溶液を基板上のラビング配向膜に塗布した後、冷却して放置することで液晶溶媒を揮発させた。これにより溶液が過飽和状態となるため、セル構造の場合と同様に有機半導体結晶の析出が可能になる。実験の結果、溶液体積が減るのに伴って溶液が配向膜状に凝集するものの、ラビング方向に屈折率異方性を有する有機半導体薄膜が基板上に析出することが確認できた。塗布溶液中の単結晶形成には、結晶核の発生と成長の過程があり、それらを配向制御した溶液と基板表面で的確に制御できたことになる。なお次年度研究の予備検討を行った結果、偏光紫外線の露光により作製した光配向膜を用いたセル構造でも、単結晶方位を制御できることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度の目標は、有機半導体・液晶溶液を基板上に塗布することにより、有機半導体の単結晶化と方位制御を実現して、研究全体の基盤技術を確立することである。まず、液晶溶媒中に析出する単結晶を、溶液を配向膜付きの基板で挟んだセル構造で確認した後、得られた結晶構造をX線回折測定で明らかにした。次に、有機半導体・液晶溶液をラビング配向膜上に塗布して、液晶溶媒を取り除いたところ、有機半導体の単結晶薄膜を得るとともに、単結晶方位がラビング配向膜で制御できることを確認した。そのため、おおむね目標が達成できたと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、有機半導体・液晶溶液の分子配向を基板配向膜の面内分割により2次元的に制御して、これまでに実現が困難とされてきた有機半導体単結晶薄膜の2次元パターンを形成する。ここでは、基板上に塗布した溶液の分子配向を面内で制御するため、偏光紫外線照射により分子構造が変化して配向処理の微細パターン化が可能な光配向膜を導入する。析出した単結晶については、光学異方性やX線回折測定により詳細な結晶構造を解明する。さらに単結晶薄膜の温度・溶媒耐性を高めるため、液晶溶媒に光硬化性モノマーを添加して高分子化することで、有機半導体薄膜の単結晶構造の安定化を図る。
|
Research Products
(3 results)