2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H03993
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 卓 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30332729)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シリコンカーバイド / フォトニック結晶 / ナノ共振器 / 高Q値化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は現在のSiC光ナノデバイスの性能制限要因となっているSiC薄膜に起因する線形吸収を低減するため、SiCOI基板のSiC層の欠陥の低減とSiCOI基板を用いないフォトニック結晶共振器の実現を検討した。 SiC薄膜の剥離のための水素イオン打ち込みを用いずに、機械的な研削・研磨およびプラズマエッチングを用いてSiO2/Si支持基板に貼り付けたSiCを薄膜化することを試みた。このような薄さの膜を均一に削り出すことは大変困難であり、所望の厚みになった領域はウエハ全面の一部分のみ(数mm角程度)であったが、作製した薄膜の特性はバルクSiCと同等であることがフォトルミネッセンス測定から判明した。さらに、この薄膜を用いてフォトニック結晶共振器を作製したところ最大でQ値300,000という共振器を得ることが出来た。これは従来の30倍のQ値であり、SiC薄膜の光吸収損失が大幅に低減されたことを意味する。これにより、水素イオンを用いないSiC薄膜化がSiC光ナノデバイスの性能向上に非常に有用であることが分かったが、一方で作製の歩留まりの問題が残っている。 上記と平行して、SiC薄膜を用いずに光閉じ込め構造を形成し、SiCOIにおける吸収損失を回避する手法も検討した。これにはSiCバルク基板に対して斜めエッチングを行うことで、三角形断面のビーム(梁)を切り出し、これによって光閉じ込めを行うものである。さらにこのビームに1次元フォトニック結晶を導入することで、光共振器を形成出来る。検討の結果、この手法によって初期的な共振器を形成することに成功し、最大でQ値40,000という値を得ることが出来た。上記の研削・研磨法と比較すると得られているQ値は低いが、これは斜めエッチングによって形成した面の加工精度が通常の垂直エッチングと比較して悪くなるためと考えられる。今後の検討による改善が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、本研究の第一段階で目指していたSiC光ナノデバイスの性能制限要因であったSiCOI薄膜に存在する線形光吸収の低減に関して、研削・研磨法によって損失を従来の1/30以下にすることに成功し、また斜めエッチング法では損失を従来の1/4程度に低減することに成功している。これは当初、想像していた以上の大幅な損失低減であり、歩留まりや加工の難しさの問題は今後解決する必要はあるが、SiC光ナノデバイスの性能向上の大きな手がかりを得ることが出来たと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は昨年度の検討で最も効果があった研削・研磨・プラズマエッチングによるSiC薄膜化をさらに詳しく検討し、使用するSiC基板の違いや、加工法の違いの影響を追求してゆくと共に、歩留まりの向上を模索する。また斜めエッチングによるバルクSiCからの共振器形成に関しても検討を続ける。そしてこれらの低損失化されたSiC光ナノデバイスを用いてこれまでにない様々な高機能・高性能応用を検討・実現してゆく。その手始めとして、高Q値SiC光ナノ共振器における二次高調波発生の研究を開始する。光共振器では、同じ入力パワーに対してQ値に比例した高い内部光エネルギー密度が得られる。またSiC光ナノ共振器では、高い光エネルギー密度においても2光子吸収損失の低減が期待出来るので(光通信波長帯において)、二次高調波発生等の波長変換が効率よく実現出来ると考えられる。Q値を高めつつ、従来デバイスでは実現出来なかったような高い波長変換効率を実現することを目指す。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Fabrication of SiC nanobeam photonic crystal cavities2015
Author(s)
Y. Yamaguchi, S.W. Jeon, B.S. Song, T. Asano, Y. Tanaka, S. Noda
Organizer
The 5th International Symposium on Photonics and Electronics Convergence - Advanced Nanophotonics and Silicon Device Systems - (ISPEC 2015)
Place of Presentation
University of Tokyo
Year and Date
2015-11-30 – 2015-12-02
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