2017 Fiscal Year Annual Research Report
シリコンMOS技術と整合性をもつスピン量子ビットとその大規模集積化
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15H04000
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大野 圭司 国立研究開発法人理化学研究所, 石橋極微デバイス工学研究室, 専任研究員 (00302802)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | スピン / 量子ビット / シリコン |
Outline of Annual Research Achievements |
一昨年度に投稿したシリコンMOSFET素子における単一電子スピン共鳴とスピン軌道相互作用に関する論文は昨年度にPhys. Rev. Lett.誌に掲載された。 昨年度に引き続き、PIN型のMOSFET素子であるトンネルFET素子について研究を行った。昨年度に観測された単一電子スピン磁気共鳴と、マイクロ波パルスによる単一電子スピンのコヒーレント操作について、動作条件の最適化を行った。その結果最大10ケルビンまでの高温動作に成功した。通常シリコンMOSFETなど電子素子で動作する量子ビットの動作温度は希釈冷凍機を用いた0.1ケルビン以下の極低温に限られてきた。今回達成した動作温度10ケルビンは電子素子量子ビットとしての世界最高動作温度である。さらに複数のトンネルFET素子において、最大室温300ケルビンに達する高い温度での欠陥準位を介した単一電子トンネル効果を観測した。この結果は欠陥準位が実際室温でも量子ドットとして機能することを示している。これらの成果をまとめた論文はSience Advance誌に投稿予定である。またこれまでに物理学会、応用物理学会など複数のシンポジウムに招待されこれらの成果について講演を行った。 さらにトンネルFET素子のチャネル中に存在する2つの電子スピンのg因子が互いに大きく異なることを見いだした。ここで互いに周波数の異なる2つのマイクロ波パルスを照射することで、2つの電子スピンを同時にコヒーレント制御することに成功した。これは目的にあげたスピンcouplerについて実験的研究を行うための第一歩となる重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2つのスピンの同時コヒーレント操作に成功した。これは理論研究課題として目的に上げたスピンcouplerについて、理論だけでなく、実験研究をも開始できたことになる。他目的に上げたスピンcouplerの理論研究、および核スピンの利用についても順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
スピンcouplerおよび、については引き続き連携研究者との共同研究を推進する。研究目的にあげた核スピン自由度の利用について研究を進めたい。
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Research Products
(9 results)