2017 Fiscal Year Annual Research Report
生体代謝ガス成分の光イメージング法の確立と疾患スクリーニングへの展開
Project/Area Number |
15H04013
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
荒川 貴博 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 講師 (50409637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三林 浩二 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (40307236)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 計測システム / 生体計測 / イメージング / 生体代謝ガス / 酵素 / バイオセンサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、皮膚表面から放出される生体由来ガスに含まれる揮発性化学情報の高感度かつ選択的な画像化(イメージング)の実現を目指している。体内の代謝に伴い呼気や皮膚ガスとして放出されるガス成分はその濃度が空間的・時間的に大きく変動する。その濃度変化や放出分布をリアルタイムで画像化し、空間的・時間的情報を兼ね備えた生体ガス情報のイメージングが可能となれば、発生部位の特定や濃度の連続測定が可能な、新規な非侵襲計測・診断法となり得ると考えられる。本申請課題は、代謝産物である糖尿病由来のアセトンや肝臓にて代謝されるエタノールなどの揮発成分を含む呼気や皮膚ガスを、光イメージングにより情報化が可能な計測システムを構築し、非侵襲的かつ簡便で新しい疾患のスクリーニングへの応用を目指した研究である。 平成29年度はこれまで構築した要素技術を集積化して、疾患由来の生体ガスのバイオイメージングシステムの構築を行った。測定の対象成分としては、肝臓の代謝機能評価のための皮膚ガス中に含まれるエタノールガスの放出動態を評価した。具体的にはアルコール脱水素酵素2型(ALDH2)の活性型(+)と非活性型(-)の被験者を用いて、代謝に基づく皮膚ガス中のエタノール濃度の変化について経時変化を計測した。また、掌だけでなく腕、首、胸上部、腋下などの上半身にて生体代謝ガスの放出動態の可視化を目指し、非侵襲な疾患スクリーニングの方法として応用を検討した。これまで得られた成果をまとめ、Analytical Chemistry誌などの論文誌にて発表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バイオイメージングシステムを用いた代謝機能評価 これまで本研究では、①化学発光とNADHの蛍光を用いた生体代謝ガス成分イメージングシステムの構築、②蛍光イメージングのための自家蛍光の少ない酵素固定化担体の検討とppbレベルへの高感度化、③皮膚表面での生体ガス成分イメージングによる放出動態の基礎検討を行ってきた。これらの要素技術を集積化して、疾患由来の生体ガスのバイオイメージングシステムの構築を目指し、研究を行った。測定の対象成分としては、肝臓の代謝機能評価のための皮膚ガス中に含まれるエタノールガスの放出動態を評価した。まず、標準エタノールガスを用いて可視化計測システムの評価を行い、次に、生体ガス計測用の実験系を構築し、飲酒後の呼気、手の皮膚ガス計測を行った。実験にて、標準エタノールガスを酵素メッシュに負荷したところ、ガス濃度に応じた蛍光分布が観察された。蛍光強度はガス負荷に伴い速やかに増加し、その後安定化した。画像解析ソフトを用いて蛍光強度を算出したところ、0.5~150 ppmの範囲でエタノールガスの定量が可能で、高感度化 (LOD: 30 ppm(化学発光) → 0.5 ppm) を実現した。さらに微分解析を行い、変化量を動画表示することで、エタノールガス濃度の時空間変化を表示できた。またこの処理により、蛍光強度がガス負荷直後から変化する様子が観察され、応答速度の向上(90%応答: 35 sec(化学発光) → 20 sec)を確認した。次に生体ガス応用として、本システムを飲酒後の呼気と手掌部皮膚ガスに供したところ、呼気と手掌部皮膚からのエタノールガスの可視化が可能であった。 ADH酵素の反応生成物であるNADHの自家蛍光を用い、エタノールガスを高い感度と応答性で蛍光にて可視化計測できるシステムを開発することに成功し、生体ガス応用にて可視化計測の有効性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した要素技術を集積化して、疾患由来の生体ガスのバイオイメージングシステムの詳細な評価を継続して行う。エタノール摂取に伴う、生体ガス(呼気・皮膚ガス)について、代謝との関連について詳細なデータを取得する予定である。糖尿病由来のアセトンをモニタリングできるシステムを検討している。また、掌だけでなく腕、首、胸上部、腋下などの上半身にて生体代謝ガスの放出動態の可視化を目指し、形状に合わせられるように柔軟性のある素材で作製したウェアラブルイメージセンサについても、検討及び評価を行う。非侵襲な疾患スクリーニングの方法として応用を図っていきたいと考えている。 また、継続して、生体代謝ガス成分の光イメージング法の確立による疾患スクリーニングへの展開を行う。糖尿病患者において糖尿病性ケトアシドーシスは,インスリン欠乏もしくは作用不足によって,脂肪酸がエネルギー源として使われ,肝臓での代謝によりケトン体が産生される。このケトン体に含まれるアセトンを非侵襲的なスクリーニングに適用可能か検討を行う。これらのヒトを用いた実験は、大学の倫理委員会の指導に基づき生命倫理、安全対策における対策と措置を十分に取り、医師や研究者に協力を仰ぎ、被験者による評価を行っていく計画である。 さらに、本研究にて得られた成果を、学術論文誌、国際学会、展示会などで発表し、情報を世界に発信し、実用化についても検討していきたいと考えている。
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Research Products
(10 results)