2015 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の自転車適正利用を促す診断・教育システムEPISODEの開発と展開
Project/Area Number |
15H04055
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 美緒 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (20573926)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
屋井 鉄雄 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (10182289)
平田 輝満 茨城大学, 工学部, 准教授 (80450766)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 自転車交通 / 高齢者 / 交通安全 / 自転車シミュレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,自己学習型の高齢者自転車適正利用診断システムEPISODE開発のための基礎データを収集し,以下の成果を得た. (1) 特に高齢者の自転車安全教育に必要なシミュレータのスペック要件の抽出:まず,自転車シミュレータでいくつかの事故形態を再現した際の教育効果と,自転車シミュレータそのものの評価の関連性を調査し,歩道通行が多い高齢者にとって,特に前輪ブレーキも含めたブレーキ特性の再現が重要であることがわかった.また,高齢者にとっては,実際のふらつきを軽減することと,見たことのない装置への緊張を解くような導入を設けることにより,自身の自転車運転に近い挙動が観測できることが明らかとなった. (2) 高齢者の自転車運転挙動の解明:高齢者の電動アシスト自転車乗用中の事故は,信号無視や一時不停止が多いことが指摘されている.そこで,高齢者の自転車利用者を対象に,交差点での待機挙動のビデオ観測調査,GPSによる経路選択調査,自転車利用に関するアンケート調査を行ない,電動アシスト自転車特有の挙動を把握した.その結果,高齢の電動アシスト自転車利用者は,車道の逆走等の違反行為が多く,車道で急発進しやすい姿勢(ペダルに足を掛ける,けんけん乗りをする)でいること,さらには勾配の多い経路を選択し,速度も出ているにもかかわらず,速度感の認識が乏しく,青点滅の横断歩道を渡るようなことも気にしていない傾向があることが明らかになった. (3) 軽度認知症高齢者の自動車運転挙動の解明:来年の道路交通法改正により認知症高齢者の自転車運転も増加することが予想される.そこで,認知症につながる行動が出始めている軽度認知症高齢者を対象に,教習所での高齢者予備講習のコースを走行させてその際の自動車運転挙動を観測することで,危険運転が観測される状況が,複数指示が与えられたとき,指示が与えられないとき等であることを抽出した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた“高齢者安全講習用の簡易版自転車シミュレータの開発”については,基となるMoricsの支持装置とプログラム(ソフト)の改良によって,まずシミュレータ酔いしやすい高齢者の対応策の方向性を示すことができたため,平成28年度にセンサの改良を行なうことで実装可能である.その他,高齢者の事故にかかわる挙動の基礎的知見を得ることができており,実験遂行のための準備ができていることから,進捗としてはおおむね順調であると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は,自己学習型の高齢者自転車適正利用診断システムEPISODE開発のためのデータ,特に高齢者の挙動に関するデータをシミュレータで再現する方法,事故を分類するための基礎的知見を収集するための研究を遂行する.
(1)高齢者の安全教育に必要なシミュレータのスペック要件の抽出:これまでに高齢者の基礎的な挙動を考慮したシミュレータのスペックを明らかにし,改良を行なうところまで遂行できたので,平成28年度には典型的ないくつかの自転車事故(出会い頭事故,乱横断による追突,逆走による正面衝突等)について,自転車シミュレータMoricsで実験し,その動作に際して再現が必要不可欠な要素の抽出と再現性検証を行なう. (2)高齢者の事故にかかわる挙動と外部刺激の抽出:事故統計やビデオデータ,ドライビングレコーダデータ等から高齢自転車運転者にかかわる交通事故を抽出し,交通案是プログラムのシナリオを設計する.自動車運転時の危険挙動を参考にし,高齢者の注意の対象の変化を観測することで,注視の対象の偏りや見落とし,周辺の交通主体との位置関係や速度差による自転車運転時の危険性を把握し,その発生メカニズムおよび引き金となる要因を解明する. (3)高齢者用の事故およびヒヤリハットデータの分類:高齢者用に改良したMoricsで実験した上記のデータに対し,一般化した分類を可能にする方法論を確立する.一般的に高齢者は個人差が非常に大きいと言われており,その個人差を超える一般性を発見する必要がある.そのため,高齢者の幅広い行動を観測し,分類を行なうための手掛かりを見出す.
|
Research Products
(7 results)