2015 Fiscal Year Annual Research Report
グライコブロッティングを利用した多糖の選択的除去による膜ファウリングの効率的抑制
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15H04063
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 克輝 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10292054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 紳一郎 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 教授 (00183898)
山村 寛 中央大学, 理工学部, 准教授 (40515334)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バイオポリマー / 膜ファウリング / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
浄水膜ろ過処理において、深刻な膜ファウリングを引き起こす有機物として高分子バイオポリマー画分が指摘されている。バイオポリマーは2万~100万Daの非常に大きな分子量を有し、多糖類を主成分としている。このバイオポリマーを効率的に除去する前処理が膜ファウリング発生の制御には重要となる。凝集や活性炭吸着のような一般的な前処理では、バイオポリマー以外の有機物成分も同時に除去する結果、バイオポリマーの除去が非効率的になるのが課題である。バイオポリマーの除去に特化した前処理技術を確立できれば、膜ファウリングの発生を効率的に抑制できる可能性がある。本研究では、血清などの生体内試料から糖鎖のみを選択的に回収するグライコブロッティングに着目した。ヘミアセタール構造を有する糖鎖は、水溶液中にて環状・鎖状構造の平衡状態にあり、鎖状構造においてアルデヒド基を含む。グライコブロッティングでは、生体内でアルデヒド基を含む分子は糖だけであることに着目し、このアルデヒド基と結合するアミノオキシ基を用いて糖鎖のみを選択的に回収する。本研究ではグライコブロッティングを水中から多糖を選択的に除去するための技術として用いることを試みる。着手段階として、グライコブロッティングを行うための市販ビーズを用い、河川水および生物処理上澄み水を試料としてバイオポリマー除去を検討した。多糖の回収・精製で設定するような高温条件(80度)ではバイオポリマーの除去が確認できたが、常温下ではほとんどバイオポリマーの除去が起こらなかった。多糖とグライコブロッティング反応に関与する官能基間の反応を加速するという報告のある触媒数種に着目し、アニリンおよび5-メチルアントラニル酸(以下5MA)を用いることで、常温下でもグライコブロッティング反応により水中からバイオポリマーの除去が可能となることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
常温下でのグライコブロッティング反応が可能となるような触媒数種を確認し、今後の研究展開可能性を大きく広げることができた。実用化を視野に入れた場合には市販ビーズの使用ではなく、安価な基材へグライコブロッティング反応に関与する官能基を導入して同様の反応を起こすことが望ましい。本研究ではアミノ基を有する市販イオン交換樹脂に必要な官能基を導入することに成功しており、市販ビーズと同等の性能を示すことを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
生物処理上澄み水と比較して、水道原水を試料としてグライコブロッティング法を適用した場合にはバイオポリマーの除去率が顕著に低くなることが多いことを観察している。両種の試料において含まれるバイオポリマーの特性が大きく異なることを示唆する結果であり、本研究で提案する処理法の適用可能範囲を検討するためにはバイオポリマー特性に関する詳細な情報が必要であると考えている。生物処理系で発生するバイオポリマーと河川水中バイオポリマーの差異について検討するとともに、河川水中バイオポリマー除去率向上のための方策についても検討する。前年度までに得られた本処理法において有効な触媒に関する情報を活用し、グライコブロッティング法を有効に適用するための新規水処理材料の合成についても、実現の可能性を検討する。
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Research Products
(3 results)