2016 Fiscal Year Annual Research Report
水環境中の未知ウイルス発見のための選択的メタゲノム解析技術の開発
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15H04065
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Research Institution | 国際連合大学サステイナビリティ高等研究所 |
Principal Investigator |
真砂 佳史 国際連合大学サステイナビリティ高等研究所, サステイナビリティ高等研究, リサーチフェロー (50507895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原本 英司 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (00401141)
久保田 健吾 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80455807)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウイルス / ゲノム / 遺伝子 / 次世代シーケンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度検討した+鎖RNAウイルスゲノムの全長を非特異的に増幅する技術を用いて,流入下水中のウイルスメタゲノム解析を実施した。その結果,ヒトに感染するウイルス由来の塩基配列は全体の5-8%(全ウイルス由来の塩基配列数の62-74%)で検出され,本技術を用いない場合より40-1000倍の効率であった。また,ノロウイルスやサポウイルスはその流行期(冬季)に最も高い割合で検出された。定量PCR法による調査結果も同様であったことから,本技術を用いたメタゲノム解析により,下水中ウイルスの存在を定量的に評価できることが示唆された。さらに,ノロウイルスは全塩基長の96%を占める塩基配列を得ていたことから,本手法により環境試料(下水)においてもウイルスゲノム全体の非特異的増幅が可能であることがわかった。したがって,下水中のウイルスゲノム群から検出対象(未同定ウイルス)のゲノムを選択的回収するための十分な塩基配列を得ることが可能であると考えられた。 また,下水処理プロセスにおけるファージやウイルスの遺伝的多様性を調べるために,初沈汚泥,活性汚泥,余剰汚泥および嫌気性消化汚泥のサンプルを採取し,DNAおよびRNAウイルスを対象としたメタゲノム解析を行った。解析に先立って細菌を対象とした微生物群集構造解析を実施し,群集構造として特異なサンプルではないことを確認した。試料中のファージ・ウイルス様粒子を集積し,核酸抽出後MiSeqを用いたメタゲノム解析に供した結果,DNAウイルスとRNAウイルスの塩基配列をそれぞれ100-200万リード得た。しかし,消化汚泥試料から得た配列を用いてBLASTによる相同性検索を行ったところ,既知のウイルスには100-200リードとごくわずかしかヒットしなかったことから,試料に存在したウイルス・ファージの大部分が未知であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度計画していた研究はおおむね完了しており,順調に進展していると判断した。一部の項目(例えばウイルスゲノムの選択的回収の実試料への適用)において遅れがみられるが,逆に環境試料からのウイルスゲノム配列の取得や解析は本来平成29年度に行う項目を前倒しして進めている。解析の結果本研究で開発する技術を適用する意義が高いことが見いだされており,研究の先が見通せたという点でも重要な知見を得る事ができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は本課題の最終年度であることから,開発した手法を環境試料に適用することによる実用性評価や,成果のとりまとめを中心に研究を進める。下水等に存在するウイルスゲノム配列はある程度蓄積できており,本課題の主目的である「選択的メタゲノム解析による未知ウイルスの探索」を行う準備はできている。塩基配列解析や環境試料の分析に重点を置き,上記主目的を達成できるよう研究を進める。
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Research Products
(5 results)