2016 Fiscal Year Annual Research Report
住民参加型風環境マップ作成プロジェクトによる新たな風環境評価尺度の提案
Project/Area Number |
15H04089
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
義江 龍一郎 東京工芸大学, 公私立大学の部局等, 学長 (60386901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白澤 多一 大妻女子大学, 社会情報学部, 准教授 (40423420)
福留 伸高 東京工芸大学, 工学部, 助教 (30599808)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地球・都市環境 / 風環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.住民参加型風環境調査と風環境マップの作成: 平成27年度に構築したスマートフォン用風速計とインターネットを用いた住民参加型風環境調査システムを利用して調査を継続した。調査参加者に対しては、計測場所、時刻は指定せず、関心のある場所で、任意の時刻の風速計測値と、その時目撃した事象や風に対する感想をGoogleマイマップ上に記入してもらうことを依頼している。調査参加者ひとりひとりの測定データを毎月集計して、ひとつの風環境マップとして、すべての人が閲覧可能な形で、本プロジェクトのwebサイトで毎月公開している。 2.住民の自由記述に基づく新たな風力階級表の提案: これまでに得られた約3000個の風速測定値および自由記述のデータを、自然言語処理の要素技術を用いたテキストマイニングの手法により分析した。その分析結果に基づき、①樹木、②屋外設置物、③髪・帽子・衣服、④傘、⑤歩行・風速感、⑥自転車のそれぞれを対象とした6つの新たな風力階級表を試作した。住民の自由記述に基づくこの風力階級表により、多様な事象・人体感覚と風速値との関係を、一般の方たちにもわかりやすく示すことができたと考える。 3.風洞実験: 調査地域を対象とした風洞実験模型(縮尺率1/500)を作製し、東京工芸大学の大型乱流境界層風洞で風環境の風洞実験を行った。またその実験データを用いて、風環境の確率的評価も行った。その結果、風洞実験で強風域と評価された地点は、上記の調査参加者が強風を申告している地点と良く対応していることがわかった。また同地区で過去に行われた13件の風環境アセスメント結果とも1件を除き概ね対応していることも明らかとなった。この1件は同地区で強風被害の苦情が寄せられているAビル近傍の風環境を不当に低く評価しており、これが風環境評価に対する住民の不信感の原因となっていることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り調査地域を対象とした風環境の風洞実験を実施することができた。またテキストマイニングの手法を用いて、住民の自由記述に基づく新たな風力階級表を、当初の計画よりも前倒しで試作することができた。 しかしながら、現状の住民参加型風環境調査システムでは、スマートフォン用風速計で測定した結果をPCのgoogle map上に入力してもらっているため、住民の方々にとって面倒な作業となっており、申告頻度が少なくデータが十分集まっていない(現時点で約3000個)。平成28年度には、風洞実験の見学会や武蔵小杉での研究集会(これまでの研究の成果報告会)などを行って住民の関心を高めるとともに、科研費とは別予算で謝金も出すようにしたが、それでも申告数に顕著な増加は見られていない。そのため、新たな風力階級表を試作したものの、特に高風速時のデータが少ないため、風力階級表の高風速部分の記述については一般性に欠けていることは否めない。また同じ理由により、気温、湿度等が、風に対する人間の感覚に及ぼす影響を分析することも困難となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の問題点を解決するための方策として、風速計測から申告までの作業をスマートフォン上で一気に簡単に行うことができるアプリの開発を検討する。 また気温、湿度、日射等が風に対する人体感覚に及ぼす影響を明らかにするために、武蔵小杉での住民参加型風環境調査とは別途、学生による地域を限定しない風環境調査を実施する。十分なデータ数を確保するために、ポケットサイズの風速計と温湿度計を携帯した複数の学生によって、任意の場所、任意の時刻に風速と温湿度を測定し、その時の体感評価を申告する。
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