2015 Fiscal Year Annual Research Report
縮小社会における都市計画:コンパクト化を目指した用途混在と性能規定の可能性
Project/Area Number |
15H04093
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 徹 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (70436583)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 都市計画 / 都市・地域計画 / 都市居住論 / 縮小社会 / 用途混在 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、住宅地への用途混在に対する居住者の意識を、利便施設の立地と居住環境保護という観点から調べるためのアンケート調査をおこない、各利便施設が居住地周辺に立地することによる居住環境へ負の影響(騒音や不特定者の往来などの嫌悪要因)が心理的効用に与える影響をコンジョイント分析により調べた。回答者には、種々の用途が居住地周辺に混在し周辺環境に影響を与えていることを想定した複数のシナリオ(具体的事例)を提示し、それらを好ましいと思う順番に並べてもらった。対象地としては、現在用途の混在が多く見られる地域、用途混在が少ない地域、首都圏近郊の郊外都市の3地域を選定し、合計4,000人からの回答を得た。分析においては、各シナリオ(プロファイル)の順位値をコンジョイント分析することにより、各施設の利便性(徒歩圏に存在すること)と居住環境への悪影響(騒音、不特定者往来など)の関係を明らかにし、騒音と不特定者往来が心理的効用に与える影響の大きさ(効用値、重要度)の比較をおこなった。 具体的用途としては、公園、商店街、大規模ショッピングセンター、24時間営業のコンビニエンスストア、病院の5つを取り上げ、それぞれに対して、昼間の騒音、夜間の騒音、昼間の不特定者往来、夜間の不特定者往来、一か月当たりの家賃を変えて組み合わせたシナリオを回答者に提示し、その「よさ」を評価してもらった。その結果、夜間の騒音、家賃、昼間の騒音の影響が大きいことが示された。今後は、用途地域や用途混在の程度など、回答者の居住地に関する物的環境指標についても考慮し、各嫌悪要因が心理的評価に与える影響についてさらに詳細な分析を進め、次年度の調査につなげる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に実施予定の調査が計画どおり完了し、得られた回答結果の分析もおこない、同分析結果に基づいた次年度の調査準備も進んでいるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、性能規定の問題に焦点を当て、前年度と同様に広範な居住者へのアンケート調査をもとに居住者の意識分析をおこなう。研究代表者のこれまでの研究結果から、居住地周辺にない方がいいという回答割合が平均的に高い用途として短期滞在型マンション、ごみ処理施設、物流倉庫、遊戯施設、墓地があり、回答者間で評価のばらつきが大きい用途として幼稚園、駐車場があることがわかっている。また、これらの各用途が居住地周辺にない方がよいと思う理由(騒音、不特定者往来、臭いなど)も明らかにしている。これらの先行結果に基づき、上記の各用途が居住地周辺に存在した場合の「嫌悪要因の程度」を軽度のものから重度のものまで変化させた具体的シナリオを作成し、前年度と同様のコンジョイント分析をおこなうとともに、性能改善のための支払意思額や、性能悪化に伴う受入補償額を尋ねることで、居住者の心理的評価を分析し、性能規定の効果および導入可能性を調べる。
|