2016 Fiscal Year Annual Research Report
レミンセンスを導入した居住環境における認知症高齢者周辺症状緩和デザイン手法の構築
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15H04099
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
田中 直人 島根大学, 総合理工学研究科, 特任教授 (60248169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 義明 岡山理科大学, 工学部, 教授 (70461209)
濱崎 裕子 久留米大学, 文学部, 教授 (00389511)
吉村 英祐 大阪工業大学, 工学部, 教授 (50167011)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / レミニセンス / 居住環境 / 周辺症状 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、認知症高齢者への刺激療法として認知症の進行等を制御する効果も期待されている〝レミニセンス(回想法)〟を活用し、「もの忘れ」等の認知症の中核症状以外の副次的な症状である「徘徊」や「興奮」等といった〝周辺症状〟を緩和させる「居住環境デザイン手法」の構築を行う。 平成28年度の研究目的は、〝レミニセンス〟を導入した『症状の緩和を誘発する居住環境デザイン手法』の部分的な空間の再現を行い、その導入前後の認知症高齢者への効果を、施設スタッフによる観察調査等で検証することである。 平成28年度では、平成27年度に実施した国内外での高齢者居住施設調査結果より得た「レミニセンス要素の有無と周辺症状の発生状況との関係性」を基に、①認知症高齢者の周辺症状の緩和が期待できるレミニセンス要素を、空間デザインに置換する手法の抽出と整理、②レミニセンス要素を導入した空間の部位アイテム(検証実験ユニット)の作成、③国内施設(特別養護老人ホーム)でのプレモックアップ検証実験の実施、を当初の予定どおり行った。尚、当初予定していた「タイムラプスビデオの画像からと、調査対象施設のスタッフによる周辺症状のある入居者行動の観察」については、研究分担者と研究協力施設の関係者らによる度重なる検討の結果、実施を取りやめ、代わりに被験者となる入居者の心拍変動からストレス値を計測し、これを〝レミニセンス〟導入前後の効果判定の一つとした。 平成28年度は、「レミニセンス要素を導入した空間の部位アイテム(検証実験ユニット)」導入後の被験者の状況に関するデータ収集を行った。被験者のストレス度の計測は専用機械により行った。計測は研究協力施設である特別養護老人ホームの介護スタッフらが、被験者の周辺症状発症時に行った。期間は平成29年2月14日からの4月7日までである(但し、周辺症状が発症しなかった日は計測していない)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度からの当初計画では平成27年12月までに、レミニセンス要素の抽出及び入居者行動観察調査<ビデオ撮影>事前準備を行い、平成28年3月までに、入居者行動観察調査<ビデオ撮影>の上、研究調査のとりまとめる予定であった。しかし平成27年12月、レミニセンス要素の抽出の結果、入居者居室への導入も重要であることが判明した。そこで行動観察範囲を個室にも拡大することが不可欠となったが、個室での撮影は個人が特定されることから調査許可を得られなかった。よって調査手法を見直し、①施設スタッフによる行動観察及びインターネット活用データ収集形式、を導入することとした。 その後の施設スタッフらとの意見交換の中で、入居者への行動観察範囲の課題が挙げられたため、補完的なデータ収集として、②被験者となる入居者の心拍変動からのストレス値の計測、を実施することとなった。以上、①と②は、平成27年度繰越分の研究として、平成28年度に実施した。さらに、当初は被験者のストレス値をある一定期間、継続的に計測するため、常時装着する「ウエアラブル装置」を検討し、製品の情報収集を行っていたが、研究分担者らとの打ち合わせの結果、被験者となる認知症高齢者には適さないと判断した。そこで周辺症状が出ている時のみに計測するタイプの装置に変更したため、導入時期をずらした。 平成28年度実施予定の調査および実験は、平成29年4月7日までに終了し、平成29年8月を目処にデータ分析を行い、同時に国内の特別養護老人ホームでの検証実験ユニットによるモックアップ検証実験の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度までに実施した調査結果をもとに平成29年度では、主に国内の特別養護老人ホームでの検証実験ユニットによるモックアップ検証実験を実施する。その際、複数の検証実験ユニットを作成、設置するため、以下の点に留意し推進を図りたい。 ①検証実験の対象が認知症高齢者およびその居住施設であるため、モックアップ(実物大模型)の安全性にかなりの配慮が必要となり、計画内容の再現性が限られることが予想される。 ②現段階では、平成28年度に実施したプレモックアップ検証実験を実施した施設で、平成29年度に実施予定のモックアップ検証実験を実施予定であるが、複数の検証実験ユニットの設置場所の確保が難しい場合は、別施設での実施の可能性もあるので、その際に要する時間も見越して早期の実施を目指す。
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Research Products
(1 results)