2015 Fiscal Year Annual Research Report
フィガリアの実測調査に基づいたギリシア古代城壁と都市の立地に関する研究
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15H04107
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
伊藤 重剛 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (50159878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 明純 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00344549)
勝又 俊雄 女子美術大学, 芸術学部, 教授 (70224475)
岡田 保良 国士舘大学, 付置研究所, 教授 (90115808)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フィガリア / 城壁 / 古代ギリシア / 古代都市 / 工法 |
Outline of Annual Research Achievements |
古代都市フィガリアについて、都市の立地を説明する周辺地形を含む広域(約4x5km)の地図1枚、また城壁内を中心とする都市域(1.5x2km)の地形図、の2枚をほぼ完成することができた。これにより今後のフィガリアの都市遺跡研究に大いに貢献することができる思われる。作成した広域地形図により、フィガリアの都市が、その南側を東から西に流れるネダ川の谷と、北西側を流れるその支流に囲まれた山の上に立地していること、東側も同じく支流となる枯川の谷で隔てられ、フィガリアが地形的には要害の地に立地していることを、地形図としてビジュアルに示すことが出来た。 しかし東側の谷は比較的浅いため攻撃はしやすく、そのため東側の城壁では半円形の塔を等間隔に設け、防御しやすい城壁として造られている。城壁の軍事的な弱点は北西部で、ここは東側からの地形が鞍部として連なってきているため、幅は広くはないが比較的平坦な部分を通過して城壁に接近できる。おそらく攻撃側はここを集中的に攻撃したものと思われる。この部分に10m四方の巨大なタワーが設けられ、たこの北西部は城壁がジグザグになっており、その突出部には方形の塔を設け、やはり防御を堅固にしている。 27年夏の調査では、フィガリアの城壁の工法を研究するために、周辺地域の十数都市を踏査し、それらの城壁の工法と比較を行なった。それによると、このフィガリア周辺の古代都市では、大半の城壁が、基本的に高さの同じ四角形の石材を使い、水平に積んでいく工法、つまり整層積み(Trapezoidal-isodomic)で行なわれていることがわかった。フィガリアの城壁は、整層積みが基本であるが、必ずしも全て整然としたものではなく、部分的に多角形積みや乱積みなどが併用されており、特に東側の部分は整層積みと言っても平板な石が積まれていることが多く、バリエーションに富んでいることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年8月から9月にかけて、伊藤、勝又、岡田の3人で、フィガリアの周辺都市の城壁を調査したことによって、フィガリアの城壁の工法について、同時代同地方の城壁の工法と比較研究ができた。これにより当初の予定通り研究は進展した。しかし城壁の工法は同じ積み方といってもバリエーションが多く、必ずしも明確に区別が出来るわけではないことも明らかになった。また、既往研究も必ずしも頼りにならないことも明らかになり、フィガリアの城壁そのものをもっと精査することが肝要と思われる。これらの研究結果は、日本建築学会九州支部の研究報告および国士舘大学イラク古代文化研究所の論文誌「ラーフィダーン」に発表した。 フィガリアはパウサニアスの旅行記にも書かれている、ペロポネソス半島の重要な都市遺跡である。殆ど未発掘の都市であり、今後の発掘調査ないし研究にとって、今回の調査は貴重なものとなるもので、本研究の初期の目的は達しつつあると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度の調査で、大方の現地調査は終了したものの、地形図に書き込む各場所の名称や写真など、若干の補完調査を行なう必要がある。代表者の伊藤は、日本では入手できない文献等もあるので、2016年度は9月に10日間程度の予定でアテネに出張し、アテネのギリシア考古学研究所、イギリス研究所、ドイツ研究所などで、古代城壁に関する文献調査を行なう予定である。勝又は古代都市フィガリアについて、文献学的に研究を進める予定である。岡田は、西アジアの古代城壁との比較を通して古代城壁の工法の分析を行なう。また、武田は古代墓の研究を通じて、フィガリアの墓に関して論考をまとめる予定である。 最初の現地調査から、数年が経っているので、今後はフィガリアの城壁および地形に関する最終報告書の作成を視野に入れて研究を進めるが、全体の構成、図面や写真のレイアウトをし、編集を少しずつ試みる予定である。
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Research Products
(6 results)