2016 Fiscal Year Annual Research Report
溶液作製ZnO層の導電性領域3次元化と透明フレキシブルLEDの創成
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15H04122
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松下 伸広 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (90229469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
我田 元 明治大学, 理工学部, 専任講師 (40633722)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 溶液作製 / 酸化亜鉛薄膜 / 導電性領域パターニング / 断面方向導電性評価 / ダイオード |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、主にUV-Aの波長領域における導電性の調査とUVレーザー照射による電気回路描画ならびにp型半導体基板上へのn型ZnO膜の作製とダイオード形成を行った。 バンドパスフィルターを用いてUV照射し、波長依存性、強度依存性、時間依存性を評価した。結果として波長が340 nm および 365 nm の場合には僅か4秒程度で10-2 Ω・cmオーダーの低抵抗となるものの強度依存性も少なからずあることが分かった。UVレーザー照射をスキャンすることで低抵抗化された部分を回路状に描画するにも成功した。さらには、UV照射によってクエンが分解された箇所で導電性が発現するメカニズムの検証を行い、これまでの膜中のクエン酸分解による多数のDefect形成によるキャリア生成やCの膜中ドープの効果に加えて、クエン酸による結晶成長抑制によって粒界の大きさが変化してポテンシャル障壁が小さくなる効果やクエン酸イオンがアクセプターとなってホールに酸化されて電子が長期安定化した可能性などが考えられる。 次にConductive AFMを用いて膜断面方向の抵抗率変化を測定した。波長がUV-Aと380 nmの照射を行ったところ、いずれもわずか1 時間の照射で膜厚 5 µmのほぼ全体に導電領域となった。Conductive AFMの結果は試料表面の凹凸の影響を大きく受けてしまうことから、膜断面の研磨が極めて重要であることを確認した。 p型基板上にn型ZnO膜を成膜するpn接合ダイオードの形成を目指した。間接遷移型p-Si基板と直接遷移型p-GaN基板のそれぞれにおいて成膜を行ったp-Si基板では膜厚 5 µmで、p-GaN基板ではクエン酸イオン濃度を2 mMとしてZnO膜を作製したときにわずかに整流性が見られ、ダイオードが形成されたことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていたp型基板上にZnO膜を溶液作製し、ダイオード特性を得ることにほぼ成功している。 これまで用いていた親水性の高いガラス基板と比べるとp型のSi基板とGaN基板のいずれも若干親水性に乏しいことから、その上にZnO膜を溶液作製する際に親水化処理や溶液濃度等の作製条件の調整を行った。また、バンドパスフィルターを用いたUV照射の実験において、波長依存性と時間依存性に加えて強度依存性の評価も行った。結果として波長が365 nm よりも短い場合に僅か4秒と極めて短時間で10-2 Ω・cmオーダーの低抵抗となることが確認できた。コンピュータ制御されたスキャニングテーブルを備えたインクジェット装置と昨年度導入したUVレーザー(波長365nm)を組み合わせたシステムを構築し、ZnO膜中に任意の部分にUVレーザーを照査して回路描画を行った。UVレーザーがあたったところとそうで無いところでは3桁以上抵抗率が異なるなど、導電領域の描画にも成功したと考えている。Conductive AFMによる膜厚方向の導電性の評価については、試料表面の凹凸の影響が大きいことから、膜断面の研磨条件を最適化した上で平成29年度に再度評価を行う予定としている。 間接遷移型p-Si基板上のZnO膜も直接遷移型p-GaN基板上のZnO膜のいずれにおいてもLED発光は得られず、それらの上での伝導性領域のパターニングは行っていないものの、ZnO層の堆積条件を最適化することで、わずかながらも整流性をもつ試料が作製可能であることが確認できた。 上記の成果を考慮し、概ね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成29年度は溶液作製した透明ZnO膜内の二次元回路描写条件の最適化に取り組むとともに、膜断面の研磨条件の最適化を行いながら断面における導電領域の紫外線照射による拡がり方をより詳しく調べる。 また、p-Si基板およびp-GaN基板上において、亜鉛イオン濃度、アンモニア濃度、基板温度等の溶液作製条件を変えることで、内部の微細構造の異なるZnO膜の作製を行い、それによるダイオード特性の違いを調べる。さらにはこれらp型基板上に溶液作製したZnO膜中にUVレーザーをスキャニング照射することで、膜中における導電性領域の二次元描写を行う。 昨年度試行的に行ったフッ素ドープされたZnO膜についても、導電性向上に貢献する傾向が見られており、導電性向上させるための条件最適化の実験を進める。 さらには、昨年度の試行実験においてMnイオンをドープしたZnO膜が自発磁化をもつことが分かった。もともとの申請書には書かれていない研究内容となるものの、溶液作製したZnO膜が磁性を持つ報告例はこれまで殆どなされていないことから、大変興味深い結果が得られたと考えている。Mnイオンとフッ素イオンの共ドープなど、堆積条件、紫外線照射条件などを様々に変えながら自発磁化をもつ透明導電性ZnO膜の作製についての研究も進める。 時間が許せば、アンモニアイオン、Agイオン、Cuイオン、Kイオンを含む原料溶液を用いてZnO膜を作製し、導電特性をホール効果測定することで、キャリア生成について調べ、p型特性を得るための成膜条件や膜構造の指針を得ることにも挑戦する。
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Remarks |
本研究に従事していた元博士課程学生が国立大学にて特任助教として採用された。
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Research Products
(10 results)