2016 Fiscal Year Annual Research Report
高速充放電リチウムイオン電池用正極に向けた強誘電体/活物質ナノコンポジットの創製
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15H04126
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
寺西 貴志 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (90598690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸本 昭 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30211874)
安井 伸太郎 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (40616687)
林 秀考 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (90164954)
保科 拓也 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (80509399)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | Liイオン電池 / 固体電解質界面 / 強誘電体 / 分極 / 高速充放電特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハイブリッド自動車や電気自動車の加速的な普及に伴い,高速充放電可能な蓄電池に対する需要が急速に高まっている.我々はこれまでにLiイオン電池を出発として,その正極活物質に強誘電体からなる人工的な固体電解質界面(SEI)を担持させることで,出力特性の大幅な改善を報告している.H27年度の検討において,正極活物質LiCoO2(LCO)-強誘電体BaTiO3(BTO)複合系においてBTO添加量が1mol%において最も出力特性が改善されることを見出した.さらにin-situインピーダンス解析の結果,BTO担持試料において電荷移動抵抗が大幅に低減することを確認した.これは強誘電体SEI-活物質-電解液三相界面でのLiイオン挿入脱離の円滑化によるものと推察した. H28年度は主として上記三相界面がLi拡散の活性起点となっていることの検証を行った.複合体合成方法を従来ゾルゲル法から金属有機分解(MOD)法に変更し,均一核生成によるBTO粒子の微細化を図ったところ,高速充放電特性は改善した.この結果はBTOの粒径減少に伴い三相界面密度が増大した効果と解釈できる.またモデル的原理確認実験として,パルスレーザー体積法(PLD)を用いてBTOとLCOの積層薄膜電池を作製し評価した.BTOをナノドット上に蒸着し,多数の三相界面を人工的に形成した積層膜において出力特性の劇的な改善が確認された.これは上記三相界面でのLi優先拡散パスの存在を示唆するものであった.一方,Co-K吸収端における時分割XAFS(X線吸収微細構造)測定をin-situにおいて行った.結果,誘電体担持による出力改善は誘電体のキャパシタライクな効果ではなく,CoのレドックスによるLi電池本来の電極反応が促進することで高容量が得られていることも明らかとなった. 関連の研究成果は多数の学会発表,並びに論文発表(2編)により報告している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度は,強誘電体―活物質複合正極における高速充放電特性の改善が,強誘電体―活物質―電解質三相界面におけるLiイオンの拡散促進に起因しているという点について,その検証を行った.複合材料合成プロセスの変更により三相界面密度を増大させたところ,高速充放電特性は効果的に改善された.また,PLD法を用いた積層薄膜電池においても,上記三相界面密度が電池性能を決定づける重要因子であることを示唆する結果が得られた.研究開始当初より期待している三相界面での優先的なLiイオン拡散モデルについて,上記の結果からある程度実証できたものと考える.関連の研究成果は多数の学会発表,並びに論文発表(2編)により報告している.研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
PLD積層薄膜において,BTOドットを形成させ強誘電体―活物質―電解質三相界面を作り出すことで出力特性は大幅に改善した.H29年度以降はBTOの被覆率を精密制御し,上記三相界面密度の最適値を決定する.決定した最適複合構造をパウダー系にもフィードバックしていく. またH28年度まで主に検討した強誘電体BTOは粒径減少による顕著な誘電率低下,すなわち粒子サイズ効果を持つ.H29年度はサイズ効果のより鈍感な誘電体界面を検討する.液相法により担持させた誘電体粒子が数10nm以下の大きさであっても効果的に分極が発現し,高速充放電特性の更なる改善を図る.具体的には,BTOに対しSrを一部Baに置換したチタン酸バリウムストロンチウム(BSTO)や高誘電率常誘電体SrTiO3(STO)について検討する. 一方,一般に活物質粒子のサイズも減少させることで高速充放電特性は改善する.これまで検討したLCO粒子(粒径訳3ミクロン)をサブミクロンにかえることで,出力特性の更なる改善を図る. 例としてLi過剰型Li2MnO3系材料は,300mAh/gとLCO(=160mAh/g)に比べ高い理論容量を示すが,高レート特性に優れない.このように高い理論容量を有しながらも高レート特性に劣る活物質材料に強誘電体界面を適用することで,容量特性・出力特性の両性能における更なるポテンシャルアップを図る.
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Research Products
(20 results)