2016 Fiscal Year Annual Research Report
ガラスの応力分布測定・破壊予測が可能な非接触応力センシング
Project/Area Number |
15H04129
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
安盛 敦雄 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 教授 (40182349)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小柳 潤 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 講師 (60386604)
安田 公一 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (20191306)
宇尾 基弘 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (20242042)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ガラス / ユーロピウム / 発光 / 熱処理 / 屈折率 / 応力 / 仮想温度 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)Euイオン添加ガラスの作製: 発光イオンとして3価のEuイオンを添加したソーダ石灰系およびソーダケイ酸塩系ガラスを溶融・急冷法で作製した。急冷試料を精密徐冷後に切断・加工し、所定の大きさの徐冷試料を得た。熱機械測定装置を用いて線膨張率測定を行い、ガラス転移温度および熱膨張係数を測定した。 (2)ガラスの光学的性質の調査: 徐冷したソーダケイ酸塩系ガラス試料およびその試料を450-540℃で所定時間保持した後に急冷した試料について、Euイオンの発光挙動を調査すると共に、ガラス構造の尺度として屈折率を精密に測定した。その結果、Euイオンの2種類の発光ピークの強度比と屈折率が、保持温度と時間に対して明確な依存性を示すことを明らかにした。この結果から、ガラスの熱的な構造緩和に基づく仮想温度とEuイオンの発光ピークの強度比の間に明確な相関関係があり、発光ピークの強度比の変化からガラス構造の熱的な履歴を捉えることが可能であることを明らかにした。分光イメージングシステムの測定・解析プログラムを新たに開発し、ソーダ石灰ガラス試料中のEuイオンの発光ピークの強度比の面分布を2次元イメージとして測定できるシステムを構築した。また、温度勾配下で熱処理して構造分布を誘起したソーダ石灰ガラス試料に対して、このシステムで熱的な構造変化の分布を捉えることに成功した。 (3)ガラスの機械的性質の調査: 熱的および機械的に応力を誘起したソーダ石灰ガラス試料について、ビッカース硬度計を用いて導入した圧痕からのき裂長比と、応力の方向と大きさに相関があることを見出した。また、有限要素解析法を用いることで、熱的および機械的にガラス中に誘起した応力分布状態のシミュレーションを実現した。 (4)成果の公表: 得られた研究成果については、国内学会2回で発表し、討論を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)ガラス試料の作製: Euイオン添加ケイ酸塩系ガラスの溶融・急冷法による作製方法は確立されており、ガラス組成の範囲を拡大している。また膨張係数の異なるソーダ石灰ガラスを熱的に融着させることで、残留熱応力を有するガラス試料が作製可能であることを明らかにしている。 (2)ガラスの光学的性質の調査: 保持温度・時間の異なる熱処理を行ったガラス試料について、Euイオンの発光挙動の調査を行っている。発光ピークの強度比ならびにガラスの屈折率の、保持温度・時間依存性を精密に測定することで、強度比から得られるガラス構造の変化は、熱的な構造緩和に由来する仮想温度を反映するものであることを明らかにしている。この結果は、ガラス構造の熱履歴による変化を、発光ピークの強度比から捉えられることを示している。また分光イメージングシステムの測定・解析プログラムを新たに開発することで、温度勾配下で熱処理し構造分布を有するガラス試料の発光ピークの強度比の面分布を2次元イメージとして捉えることに成功している。この結果は、応力によるガラス構造の変化も、2次元イメージとして捉えられる可能性を示している。 (3)ガラスの機械的性質の調査: ガラス試料の応力-発光特性の測定を行うために、荷重-変位が計測できる小型機械試験機を新たに作製し、所定の性能が得られている。また、ビッカース硬度計を用いて導入した圧痕からのき裂長が、熱的および機械的に誘起した応力の大きさと相関があることを見出している。さらに有限要素解析法を用いることで、熱的および機械的にガラス中に誘起した応力分布状態のシミュレーションを実現している。 (4)新たな取り組み内容: ガラス中の発光中心となる希土類イオンの配位状態について、異なる波長の複数の発光ピークの強度比から解析を行い、その結果に関する理論的な考察を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)希土類イオン添加ケイ酸塩ガラスの作製: これまでの成果を踏まえ、Euイオンを添加したソーダ石灰ガラス系およびナトリウムケイ酸塩系に加えて、アルカリ金属およびアルカリ土類金属元素を系統的に変化させた組成のガラス試料を作製する。また所定の温度・時間で熱処理を行い、ガラス構造の異なる試料を作製する。さらに、Eu以外の希土類イオンを添加したガラスを作製する。 (2)ガラスの光学的性質および構造の調査: ガラス試料の蛍光スペクトルを測定し、Euおよび他の希土類イオンによる発光挙動とガラス組成およびガラスの熱履歴の関係を系統的に調査する。放射光を用いたガラス中の希土類イオンの配位状態の解析に代わって、作製した種々の組成・構造のガラス試料中の希土類イオンの複数の発光ピークの強度比を用いて、希土類イオンの配位状態とその発光特性の関係について、実験的および理論的な解析・検討をさらに進める。 (3)ガラスの機械的性質の調査: ガラス試料と超音波パルスエコー法およびビッカース硬度計を用いて、ガラスの破壊靭性や構造緩和に及ぼす基本組成、熱履歴の影響を調査する。作製した機械試験器、分光イメージングシステムおよび紫外光源を用いて、ガラス試料に引張り・圧縮応力を印加しながら発光特性を動的に測定し、応力印加による発光変化の過程を解析する。さらに、有限要素法を用いて、ガラスの冷却時のガラス中の応力状態・分布を、引き続き解析・シミュレーションする。得られた結果から、熱的および機械的に誘起される応力とガラス中の希土類イオンの発光特性およびガラス構造の関係について解析を行う。 (4)研究の総括: これまでに得られた知見を基に、希土類イオンの発光による応力センシング機構の原理を確立し、また評価装置・方法の最適化に対する具体的な指針を示す。
|
Research Products
(2 results)