2017 Fiscal Year Annual Research Report
銅ナノ粒子を用いたレーザー直接描画による微細配線形成およびレーザー焼成機構の解明
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15H04132
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 明 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (40182901)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レーザープロセッシング / レーザー直接描画 / レーザー焼成 / 銅ナノ粒子 / 微細配線 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、銅ナノ粒子を用いたレーザープロセッシングによって、フレキシブル透明ポリマー基板上へも高導電性微細パターンを自在に形成することが可能な手法を開拓することを目的としている。前年度までの検討において,金属ナノ粒子のレーザー直接描画で形成した導電性パターンの曲げ試験で、大きな抵抗値変化が起こることが観測されていた。このような特性はストレインセンサー的な用途では利点ではあるものの、フレキシブルデバイスにおける電気配線という観点からは、デバイス特性の不安定性の原因となってしまう。レーザーシンタリング後の薄膜の電子顕微鏡像からは、金属連続相とは異なるナノ構造の残存が示された。この問題の解決策として、レーザー直接描画法で形成した銅微細パターンに電解銅めっきを適用することによって、ナノ構造の残存するモルフォロジーの改善を行った。さらに、異種材料とのハイブリッド化による折り曲げ時の特性変化の問題の解決を目指した。グラフェン系材料は次世代の導電性機能材料であり、それらのナノカーボン系の物質では、分子間のπーπ相互作用によって,折り曲げ時における電気特性の自己修復性の発現が期待される。レーザー直接描画法による導電性カーボン材料の形成や、レーザー誘起還元型酸化グラフェンに関する検討を行った。それらのソフトな導電性材料では、予想したとおりに、折り曲げ時にもほとんど電気特性の変化が起こらず、このような特性は今後のフレキシブルエレクトロクスにおいて重要性が増すと考えられる。しかし、導電性の面では金属材料に劣ることから,両者の特性を兼ね備えたハイブリッド材料を目指した研究を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、レーザープロセッシングによる銅ナノ粒子を用いた導電性微細パターン形成プロセスを確立できており、また、それらを用いたセンサーデバイスに関する検討を行えている。銅ナノ粒子のレーザーシンタリングにおいては、レーザー照射条件により、化学構造、モルフォロジー、電気特性が顕著に変化し、それらを、顕微ラマン分光法、電子顕微鏡観察、導電性測定から明らかにできている。また、それらの研究を効果的に行うために、レーザー光波長(405, 445, 532, 808, 1064 nm)の影響を検討できる実験系を確立できている。また、ガルバノミラースキャン部と自動ステージスキャン部とからなるレーザー描画装置によって,より高速な銅ナノ粒子のレーザー焼成および微細パターン形成が可能となっている。さらに、3D構造体への電気配線パターン形成を目指した検討も開始しており、5軸モーションコントローラーで制御されたXYZステージ、基板への金属ナノ粒子インク滴下のためのマイクロチューブポンプ、スピンコーターのステッピングモーター、および405 nmブルーバイオレッドレーザーから成る装置や、ガルバノスキャナーによる高速な3Dレーザー光スキャン系の検討に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、以下の項目の検討を進めていく。 (1)フレキシブルポリマー基材上に形成した銅微粒子と導電性カーボンのハイブリッド系膜へレーザーシンタリングを適用し、導電性、モルフォロジー、および化学構造変化に及ぼすレーザー光照射条件の検討を行う。導電性カーボン材料としては、カーボンナノチューブ、グラフェン、およびレーザー誘起還元型酸化グラフェンを用いた検討を行う。これらの炭素材料においては分子間のπーπ相互作用によって、折り曲げ時における電気特性の自己修復性の発現が期待されるが、導電性の面では金属材料に劣ることから、両者の特性を兼ね備えたハイブリッド材料によるブレークスルーを目指した研究を引き続き行う。 (2)上記の材料による配線パターンをシード層とした電解銅めっきにより、電気特性やモルフォロジーの向上を目指す。 (3)レーザー光照射条件に関しては、レーザーパワー、レーザー光スキャン速度、焼成雰囲気、およびレーザー光波長の影響の検討を行う。レーザー光スキャン速度に関しては、ガルバノスキャナー系により、これまでに比べて10倍以上の高速なレーザー光スキャン(~500 mm/s) が可能となっている。(4)ナノ粒子・マイクロ粒子ハイブリッド系を検討することによって、レーザーシンタリング時における酸化反応の低減や金属連続相の均一化を目指した検討を行う。(5)酸化銅ナノ粒子系に関しても、上記(1)-(3)に関連した実験を行い、銅ナノ粒子系との比較検討を行う。 (6)上記の実験で得られた知見に基づき、レーザープロセッシングによる3Dプリント構造体への銅配線形成の新規プロセス開拓に関する研究を行う。
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Research Products
(16 results)