2015 Fiscal Year Annual Research Report
三次元積層造形と塑性加工の融合による生体用Zr合金の高機能化
Project/Area Number |
15H04140
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野村 直之 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90332519)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生体・医療・福祉材料 / MRI対応低磁性合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「レーザー積層造形法」と加工誘起変態による機能発現のための「塑性加工」を融合させた加工プロセスを提案し、MRIアーチファクトを抑制でき、かつ低弾性特性を示す生体用低磁性Zr合金の開発を行うことを目的としている。力学的機能において信頼性の高い金属材料にとって、MRIアーチファクトを低減することは喫緊の課題である。本研究ではレーザー積層造形法により低磁性Zr合金を造形した後、塑性加工により低弾性機能を発現させることを目指す。 本研究の初年度(H27年度)においては、(1)レーザー積層造形用Zr-Nb-Sn合金粉末の作製とキャラクタリゼーション、(2)レーザー積層造形条件の確立、(3)積層造形体のキャラクタリゼーション、を計画した。しかし積層造形体作製のための粉末量が十分に得られず(2)、(3)に進めなかったことから、(1)について行った実験結果の概要を以下に報告する。 ガスアトマイズ装置に供する合金棒材を作製するため、Zr-Nb-Sn合金を減圧アルゴン中にて溶解を行い、その後鋳型に鋳込むことで直径40mm、長さ585mmの棒材(約4.7kg)を得た。この棒材を用いてガスアトマイズ法により合金粉末作製を行った結果、球形Zr-Nb-Sn合金粉末を得ることに成功した。粉末表面にはサテライト粉末の付着があり、デンドライトの形成が確認された。X線回折法により構成相を解析した結果、体心立方格子を示すβ相が確認された。一方で、α相もしくはω相を思われる微弱なピークの存在が確認されたことから、本合金粉末はβ相を主相とする準安定合金となっていることが分かった。この結果は、ジルコニウム合金粉末の組成が加工誘起変態を起こす可能性を示しており、積層造形用粉末の作製は組成の観点から成功したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
レーザー積層造形体の作製に供する粉末量を得られていない。その原因は、棒材作製プロセスおよび粉末作製プロセスの構築を行うのに時間を要したためである。これらのプロセスは特殊装置が必要なため国内業者への外注により遂行していたが、これまでの作製実績とは異なる合金種であるため、傾向を把握することを中心に研究を推進した。試作段階で得られた粉末に関しては、組成、構成相、レーザー吸収率、磁化率について評価を進め、ジルコニウム合金粉末の特徴把握、チタン合金粉末との比較検討を進めている
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Strategy for Future Research Activity |
棒材作製プロセスに関しては、溶解温度、鋳込み量、溶解時間、鋳型選定について溶解メーカーと協議しながら行うことにより、ほぼ確立した。一方、アトマイズによる粉末作製に関しては、レーザー積層造形に必要は45um以下の粒径の歩留まりが向上する目途が立ちつつある。したがって次年度は前半から粉末の大量作製にトライし、積層造形に必要な粉末量を得る予定である。これまでに得られたガスアトマイズ粉末と作製条件が異なることから、組成、粒度分布、構成相の同定等の粉末のキャラクタリゼーションを再度検討する必要がある。その上で、(2)レーザー積層造形条件の確立、(3)積層造形体のキャラクタリゼーションの研究項目に進み、当初予定していた塑性加工による低弾性率化と磁化率の影響評価に取り組む予定である。
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