2015 Fiscal Year Annual Research Report
砒酸鉄(スコロダイト)結晶の生成・成長機構の解明と循環型連続反応プロセスの構築
Project/Area Number |
15H04164
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柴田 悦郎 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70312650)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 砒素 / スコロダイト / 非鉄製錬 / 安定固定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
銅製錬を初めとする非鉄製錬業においては、鉱石中の砒素含有量の増加により、製錬工程で排出される砒素濃縮物からの砒素の安定固定化が死活的課題となっている。研究代表者は、同じく非鉄製錬工程において廃棄物として排出される酸化鉄(III)粒子が、Fe(II)とAs(V)含有溶液と反応することで、スコロダイト(FeAsO4・2H2O)結晶粒子に転換することを明らかとした。本研究では、上記反応におけるスコロダイト結晶の生成・成長機構を詳細解明して基礎的知見を得るとともに、砒素の安定固定化プロセスの構築を目的としている。 本年度は、As(V)含有の硫酸第一鉄(FeSO4)溶液と固体ヘマタイト(Fe2O3)との反応による結晶性スコロダイト(FeAsO4・2H2O)の生成機構を解明するために、表面研磨したヘマタイト(Fe2O3)焼結体を同様のスコロダイト合成用の溶液に浸漬する方法で、ヘマタイト表面にスコロダイト結晶を成長させた。反応後の焼結体表面を、XRD、顕微Raman分光、レーザー顕微鏡、SEM-EDXで分析ならび観察することにより、ヘマタイト結晶上でのゲル状前駆体の生成ならびにスコロダイト結晶への転換と成長を詳細に調査した。 その結果、以下の結晶性スコロダイトの生成機構が推測された。まず、ヘマタイト結晶粒界で優先的に溶液との反応が進行し、その結果、ゲル状前駆体が生成し、ヘマタイト表面への被覆と堆積が進行する。また、ヘマタイト結晶粒界で優先的にスコロダイト結晶核が生成し、結晶核が合体ならびに成長しながらステップを形成して最終的にファセット状のスコロダイト粒子へと成長する。その後、成長したファセット状のスコロダイト粒子の隣接する粒子との合体・凝集が進行する。 また、今年度は、ヘマタイト結晶表面でのスコロダイトの生成ならびに成長のin situ観察を行うために、顕微鏡観察用の加熱ステージを導入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、As(V)含有の硫酸第一鉄(FeSO4)溶液と固体ヘマタイト(Fe2O3)との反応による結晶性スコロダイト(FeAsO4・2H2O)の生成機構を解明するために、表面研磨したヘマタイト(Fe2O3)焼結体を同様のスコロダイト合成用の溶液に浸漬する方法で、ヘマタイト表面にスコロダイト結晶を成長させた。反応後の焼結体表面を、XRD、顕微Raman 分光、レーザー顕微鏡、SEM-EDXで分析ならび観察することにより、ヘマタイト結晶上でのゲル状前駆体の生成ならびにスコロダイト結晶への転換と成長を詳細に調査した。その結果、初年度としてはスコロダイト生成ならびに成長機構に関して十分な成果が得られた。また本年度は、ヘマタイト結晶表面でのin situ観察用の加熱ステージを導入した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に引き続き、As(V)含有の硫酸第一鉄(FeSO4)溶液と固体ヘマタイト(Fe2O3)との反応による結晶性スコロダイト(FeAsO4・2H2O)の生成機構を解明するために、表面研磨したヘマタイト(Fe2O3)焼結体を同様のスコロダイト合成用の溶液に浸漬する方法で、ヘマタイト表面にスコロダイト結晶を成長させる実験を行う。本年度は表面研磨をダイヤモンドペーストで行ったが、次年度はさらに平滑なヘマタイト焼結体表面でのスコロダイト生成を調査するために、Arイオンビームによる表面研磨試料の調整を行う。平滑な表面仕上げをすることで、表面での変化をさらに明瞭に観察できると考えている。また、ヘマタイト結晶方位がスコロダイト生成におよぼす影響を調査するために、ヘマタイト単結晶試料を実験に使用する予定である。さらには、顕微鏡観察用の加熱ステージによる、ヘマタイト結晶表面でのスコロダイトの生成・成長のin situ観察により、本年度以上にスコロダイトの生成ならびに成長機構が明確になると考えている。
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