2016 Fiscal Year Annual Research Report
砒酸鉄(スコロダイト)結晶の生成・成長機構の解明と循環型連続反応プロセスの構築
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15H04164
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柴田 悦郎 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70312650)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 砒素 / スコロダイト / 非鉄製錬 / 安定固定化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、ヘマタイト焼結体表面に成長したファセット状スコロダイト結晶粒子を集束イオンビーム(FIB)で縦断面加工してSEM-EDX分析を行った。その結果、スコロダイト結晶はヘマタイト結晶粒界にくさびを打ち込むように成長していることが確認され、ヘマタイト結晶粒界で優先的にスコロダイトの生成と成長が進行していることが裏付けされた。また、Arイオンビームによりヘマタイト焼結体表面を研磨したが、研磨部分に縞状段差が出来たことから、ダイアモンドスラリーを用いた長時間の機械研磨に変更した。その結果、昨年度よりも広い面積で平滑表面を効率よく得ることが出来た。その他、加熱ステージとレーザー顕微鏡を用いて、スコロダイト生成に関するin situ観察を行った。観察窓の曇り等の原因で、当初計画の95℃(基本条件)よりも温度が低い50℃でかつ反応初期のみの観察となったが、ゲル状前駆体がヘマタイト焼結体表面を覆う様子がin situに観察された。さらに、放射光施設を利用してゲル状前駆体のXAFS分析を行い、ゲル状前駆体がFe(II)を含有した砒酸鉄化合物であることを確認した。XAFS分析では、ヘマタイト焼結体表面に生成したゲル状前駆体の膜厚が薄かったので、粉末添加法で作製したゲル状前駆体粉末を分析に供した。ヘマタイト焼結体表面に生成したゲル状前駆体に関しては、薄膜X線回折法(GIXD)により、焼結体表面を非晶質物質が薄く覆っていることを確認した。さらに、今年度は、ヘマタイト粉末添加法において、廃液を循環利用する試験装置の作製も行った。また、昨年度の実績報告内の今後の推進方策に、当初予定には無かったヘマタイト単結晶試料を使用するとしていたが、やはり、ヘマタイト焼結体を用いた実験において詳細に検討すべき事項が多くあることから、当初計画へ戻し、今年度以降も焼結体を使用して実験を遂行することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、FIB加工したファセット状スコロダイト縦断面のSEM-EDX分析、ゲル状前駆体のXAFS分析やGIXD分析、レーザー顕微鏡による前駆体生成のin situ観察など、スコロダイト生成・成長機構の解明に向けた分析が大きく進展した。また、ヘマタイト粉末添加法における、廃液を循環利用する試験装置の作製も行うことができた。若干の交付申請書内の研究計画ならびに、一部、昨年度実績報告内の今後の推進方策で記載した計画からの変更はあったが、本年度得られた詳細分析等の研究結果の学術的価値を考慮しておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成29年度は、引き続き、ヘマタイト(Fe2O3)焼結体をAs(V)含有の硫酸第一鉄(FeSO4)溶液に浸漬する方法で、ヘマタイト焼結体表面にスコロダイト結晶を生成・成長させる実験を行う。固体ヘマタイトからの結晶性スコロダイトの生成・成長機構の解明に向けて、溶液温度等の反応条件の変化がスコロダイトの生成・成長に及ぼす影響を調査する。さらには、ヘマタイト粉末添加法において、廃液を循環利用した場合のスコロダイト合成に及ぼす影響を検証するために、本年度作製した廃液を循環利用する試験装置を用いたスコロダイト合成実験を行う。
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Research Products
(4 results)