2015 Fiscal Year Annual Research Report
持続型低炭素製鉄を目指した高温プロセス内原料軟化融着挙動可視化技術の開発
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15H04168
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大野 光一郎 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50432860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
助永 壮平 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (20432859)
夏井 俊悟 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70706879)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金属生産工学 / シミュレーション工学 / 製造プロセス / 高温融体 / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
変わりゆく原料事情に対応しながらCO2排出量削減技術を実現するためには、化学反応のみならず物理現象の側面から見た高炉内現象の正しい理解が必要不可欠であると言える。本課題では、高炉融着帯生成挙動解析システムによる震災起因木質系バイオマスの製鉄利用最適化研究 (課題番号24686084)」において申請者が開発した「革新的軟化溶融シミュレーター」と、本申請課題で構築する「高温融体物性その場測定システム」を組み合わせ、それらの知見をフィードバックして作成する「粒子法による数値シミュレーションモデル」により、持続型低炭素製鉄を目指した高温プロセス内原料軟化融着挙動可視化技術を開発することを目的としている。 平成27年度は、九州大学の大野により、革新的軟化溶融シミュレーターとマイクロCT撮影を組み合わせた、窒素ガス流通条件下黒鉛粒充填層内における試薬スラグの溶融挙動を評価が行われ、スラグの表面張力が充填層内のガス圧力損失挙動に及ぼす影響についての相関関係が示唆された。 東北大学の助永により、高炉系スラグの表面張力が大気中で測定され、表面張力の発現メカニズムを融体表面の構造モデルとともに提案された。さらに、酸化物融体の表面張力に関する文献調査が行われた結果、スラグの表面張力は気相組成に依存することが明らかにされた。 北海道大学の夏井により、粒子法による固液混相流解析手法として、任意形状の剛体運動を追跡可能な離散要素法(RB-DEM)と弱圧縮性を導入し数値的に安定化したWC-MPSおよびWC-SPHのカップリングが行われた。さらに、充填層中を流下する体積一定の高表面張力融体のフローパターンについて、ボンド数によって整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、研究代表者である九州大学の大野により、革新的軟化溶融シミュレーターとマイクロCT撮影を組み合わせた、窒素ガス流通条件下黒鉛粒充填層内における試薬スラグの溶融挙動を評価が行われた。スラグ融体の生成挙動のみならず、その融体物性に着目して整理を行った結果、特にスラグの表面張力が充填層内のガス圧力損失挙動に強い相関関係が示すことが明らかとなった。 研究分担者である東北大学の助永により、実験と文献調査等によりスラグの表面張力データの整理が行われるともに表面張力の発現するメカニズムについて考察がなされた。その結果、スラグ中の非架橋酸素が粘度の表面張力の上昇に寄与することが明らかとなった。さらに、文献調査から、ケイ酸塩系過冷却液体の表面張力に雰囲気ガス種が影響することが報告されており、特に雰囲気中のH2OやCO2ガスが表面張力を低下させる効果があることが判明した。このことから、溶融スラグの表面張力は雰囲気ガス種に依存する物性であると考えることができ、高炉内でのスラグの挙動を正確に理解するには、炉内に存在するN2やCO2, H2Oなどの融体表面への吸着のスラグ表面張力の影響について調査する必要があることが判明した。 研究分担者である北海道大学の夏井により、粒子法による固液混相流解析手法として、任意形状の剛体運動を追跡可能とした拡張型離散要素法(RB-DEM)と弱圧縮性を導入し数値的に安定化したWC-MPSのカップリングが完了した。また、TESLA K80を利用したGPGPU計算にも着手したことにより、微小流路の形状および流動現象の素過程からマクロスケールの動的な圧力損失、ホールドアップまでを同時にシミュレーションすることができるようになった。これらを用いて、充填層中を流下する体積一定の高表面張力融体のフローパターンについて、ボンド数による整理がおこなわれた。
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Strategy for Future Research Activity |
九州大学の大野による革新的軟化溶融シミュレーターによる実験後急冷試料のマイクロCT撮影により、充填スラグ粒層の層構造変化を逐次変化の3次元観察が可能となった。本年度は黒鉛粒の形状を球状に統一することで実験条件を単純化したうえで、ガス圧力損失に直接関係するガス流通路の形状を測定することで、粒子法における数値シミュレーションへのフィードバックを試みる。さらに黒鉛試料のみならず製鉄原料である石炭やコークスを用いた検証も行う。 東北大学の助永は、スラグの表面張力に及ぼすガス種の影響を明らかにすることを目標とし、雰囲気制御可能な表面張力測定装置(九州大学現有設備)を用いて、単純なアルカリケイ酸塩融体(Li2O-SiO2およびNa2O-SiO2系)の表面張力に及ぼす雰囲気(雰囲気:Ar, Air, CO2)の影響について調査を行う。 北海道大学の夏井は、非球形要素のつくる空隙形状はその充填過程により大きく変化し、配列のパターンの深い理解には統計的処理あるいは確率的議論が必要と考えている。本年度は、さまざまな充填層構造を対象に空隙を通過する融体流れに種々の物性および条件が与える影響について議論する。非球系要素を考慮した流下速度、液滴分散、ホールドアップの観点から無次元解析などによる各物理量の関係性を見出すことを目的とした調査を検討する。 これらの検討により、H29年度以降の検討課題である高炉スラグに近い組成の表面張力を決定するための基礎的知見を築くことを目指す。
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Research Products
(17 results)