2016 Fiscal Year Annual Research Report
組換え昆虫細胞による次世代インフルエンザワクチンの迅速高生産技術の開発
Project/Area Number |
15H04195
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山地 秀樹 神戸大学, 工学研究科, 教授 (40283874)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 昆虫細胞 / 組換えタンパク質生産 / ウイルス様粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス様粒子は,ウイルス感染症を予防するための有効かつ安全な次世代ワクチンとしての利用が期待されている.本研究では,インフルエンザウイルス様粒子ワクチンを迅速に高生産するための新たな技術基盤の確立を目指す.このため本研究では,A型のインフルエンザウイルスの構造タンパク質であるヘマグルチニンHAおよびマトリックスタンパク質M1の遺伝子を共発現する組換え昆虫細胞を作製し,両タンパク質と脂質二重層から構成されるウイルス様粒子の連続分泌生産系の構築について検討する.本年度は,HAおよびM1のcDNAをそれぞれクローニングした,異なる薬剤耐性遺伝子を有する2種類の高発現型プラスミドベクターを昆虫細胞にコトランスフェクションすることにより,HAおよびM1を共発現する安定形質転換細胞の構築を試みた.HAおよびM1の発現ベクターを昆虫細胞にコトランスフェクションした後,これらのプラスミド上に存在する薬剤耐性遺伝子に対応する2つの薬剤の存在下で長期間培養を続けることにより,薬剤耐性株を取得した.得られた薬剤耐性株の培養上清を抗HA抗体および抗M1抗体を用いてウェスタンブロッティングにより分析したところ,HAおよびM1に相当する分子量付近にそれぞれ特異的なバンドを検出することができた.このことから,HAおよびM1を連続的に分泌生産する組換え昆虫細胞を作製に成功したと言える.また,培養上清をショ糖密度勾配遠心分離により分画した各フラクションをウェスタンブロッティングで分析すると,HAとM1がほぼ同等のショ糖密度のフラクションに確認された.さらに,培養上清を動的光散乱法で分析したところ,上清中に最頻粒子径が約120 nmの粒子が存在することがわかった.これらのことから,組換え昆虫細胞が分泌生産したHAとM1はウイルス様粒子を形成している可能性が示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HAおよびM1の発現ベクターをコトランスフェクションし,2種類の薬剤の存在下で長期間培養することにより得られた組換え昆虫細胞がHAおよびM1を分泌発現することを確認できたとともに,HAとM1がウイルス様粒子を形成している可能性が示唆された.
|
Strategy for Future Research Activity |
ミツバチ由来のメリチン,バキュロウイルス由来のgp64などのシグナル配列をHAおよびM1の各遺伝子の上流に付加することにより,分泌生産性の増大した組換え昆虫細胞の取得を目指す.得られたウイルス様粒子の高生産株を用いて,振とう法などの小規模な培養実験により,組換え昆虫細胞の増殖特性およびインフルエンザウイルス様粒子の生産特性を明らかにする.また,酵素免疫測定法 (ELISA) によるHAの定量法を確立するとともに,赤血球凝集試験によるHA活性の評価などを検討する.
|
Research Products
(4 results)