2015 Fiscal Year Annual Research Report
大型ゴッサマー多体宇宙構造物の運動予測法の確立と運動の理解
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15H04204
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
宮崎 康行 日本大学, 理工学部, 教授 (30256812)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 展開宇宙構造物 / ゴッサマー構造物 / 柔軟多体動力学 / 構造保存解法 / 運動予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
年度当初の計画に基づき,以下の2つのテーマを実施した. 【テーマ1】解析コードNEDA3.0 の完成とIKAROS2 の設計・解析への適用:当初計画では構造保存型非線形有限要素法に基づく,大規模並列化に対応した解析コードNEDA3.0を完成させる予定であったが,収束計算における桁落ち誤差が無視できなくなる場合があることが明らかとなり,その対処に時間を割いたため,完成には至らなかった.ただし,コーディングはできており,あとはIKAROS2の解析を通じてバグ取りをするだけである.また,コーディングの過程で,より高速なアルゴリズムを見出せたため,当初予定よりも性能の高い解析コードが実現する目途がたった. 【テーマ2】自己展開膜面トラスとスピン展開膜の小規模地上実験の実施:バイコンベックスブームを部材とする自己展開膜面トラスと,IKAROS を模擬したスピン展開膜構造物を製作し,航空機内(微小重力環境)で展開実験を実施した.また,自己展開膜面トラスについては1G下での展開実験を行うとともに,簡易数学モデルを構築し,数値計算と実験結果を比較することで,モデルの妥当性を示した.さらに,大型真空槽およびフラットベンチでの実験環境を整備した.これらに加えて,超小型衛星を用いてインフレータブル膜構造物の展開実験を軌道上で実施し,それに対応した地上実験も微小重力環境で実施した.そして,両者を比較することで,インフレータブル膜構造物の展開運動の特徴を明らかにした.さらに,膜面のスピン展開の相似則理論も構築した. そして,バイコンベックスブームの収納時の変形の解析解を導いた.また,膜面の展開運動中に動的座屈を引き起こる外乱の条件を解析的に導き,設計物の外乱に対するロバスト性の定量的評価法と,外乱にロバストな設計法を示した. 以上により,大型ゴッサマー宇宙構造物の設計・解析法の核となる部分が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で実施したテーマ1に関しては,並列解析コードNEDA3.0が完成しなかった点は,当初計画よりも遅れている.しかしながら,長時間のシミュレーションにおける桁落ち誤差の影響を回避する方法を見出したこと,並列計算のアルゴリズムやモデルの近似手法を工夫したことで,当初計画よりもNEDA3.0の性能が大きく向上する見込みが得られたことは,当初の計画以上の進展である.また,フリーのライブラリ(OpenMPI)でNEDA3.0を構築したことは,誰もがNEDA3.0を利用できるという点で,ゴッサマー宇宙構造物の研究,ならびに,宇宙機の高度化に関する研究の両面で,重要な成果であると考える. テーマ2に関しては,航空機を用いた微小重力実験では,実験方法を工夫し,同時に3ケースの実験をすることができるようにしたことで,当初計画よりも数多くの実験を実施することができた.この実験方法自体が重要な成果である.また,超小型衛星SPROUTに搭載したインフレータブル膜構造物の展開実験を軌道上で実施できたことも,当初計画にはない成果であり,その結果を踏まえて,航空機を用いた微小重力実験を行い,インフレータブル膜構造物の展開が1G・大気圧下と無重力・真空下とでは大きく異なることを定量的に示すことができたことも,重要な成果となった.加えて,H28年度に予定していた膜面のスピン展開の相似則理論の構築を前倒しでできたことは,当初計画以上の成果である. さらに,バイコンベックスブームに関する理論解析が当初計画以上に進み,その成果が学術誌に掲載されたこと,膜面の展開運動における動的分岐座屈に対する外乱の影響を評価する理論を構築し,学術誌への掲載されたことは,当初計画にはなかった成果である. 以上より,NEDA3.0が未完成である点を除いては,全て当初の計画以上に進展しており,総合的にみて,順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,大型膜面やケーブルなどのゴッサマー構造と伸展ブームや宇宙機本体などの支持構造から成る大型ゴッサマー多体宇宙構造物の高速・高精度の運動解析理論の構築と,展開などの運動の予測法の確立,それによる運動の本質の理解を目的とし,次の3つのテーマを設定し,実施するものである.そのうち,テーマ1とテーマ2の一部をH27年度に実施した. 【テーマ1】解析コードNEDA3.0 の完成とIKAROS2 の設計・解析への適用,,【テーマ2】自己展開膜面トラスとスピン展開膜の小規模地上実験の実施と相似則構築,【テーマ3】経験的固有直交分解によるモデル低次元化手法の構築.ただし, H27年度までに,テーマ1についてはNEDA3.0の完成とIKAROS2への適用以外は終了しており,テーマ2についても実験データはほぼ取得済みである.テーマ3については未着手であるが,ベースとなる部分は研究を実施済みである. さらに,H28年度は,直径4m級の自己伸展膜面トラスの軌道上実験を行う超小型衛星の開発のオファーを学外からいただいており,もし,これが確定すれば,本研究の成果を宇宙実験する準備も整うこととなり,本研究の当初計画を大きく上回る成果が得られると考える. そこで,本研究のさらなる発展を目指し,1年前倒しH28年度中に本研究の目的を達成するよう,H28年度前半は急ピッチに研究を進める.特に,NEDA3.0の完成を急ぎ,実験データおよび数値解析データの整理,提案する構造保存解法および数値解析コードの評価を行う.そして,H28年度前半で本研究の目的達成の目途がついた場合には,基盤研究(A)や(S)の申請を行うとともに,H28年度後半は,成果を学会等で発表する.目途がつかなかった場合にも,H28年度後半には提案する構造保存解法と数値解析コードを評価し,H28年度中に本研究の目的の大部分を完了することを目指す.
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Remarks |
日本大学宇宙構造物システム研究室ホームページ http://forth.aero.cst.nihon-u.ac.jp/
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Research Products
(19 results)