2016 Fiscal Year Annual Research Report
Establishment of Prediction Method of Dynamics of Large Gossamer Multi-body Space Structures ans Understanting of Their Dynamics
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15H04204
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
宮崎 康行 日本大学, 理工学部, 教授 (30256812)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 展開宇宙構造物 / ゴッサマー構造物 / 柔軟多体動力学 / 構造保存解法 / 運動予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度当初の計画に基づき,以下の3つのテーマについて研究を実施した. 【テーマ1】解析コードNEDA3.0の完成とIKAROS2の設計・解析への適用:現有のエネルギ・モーメンタム法をベースとした構造保存型の非線形有限要素法に基づく並列解析コードNEDA2.0を大規模な並列化に対応させたコードNEDA3.0を作成した.このNEDA3.0の特徴は,並列計算ライブラリOpenMPIに対応した,構造領域分割型の並列コードであり,反復計算における感度マトリクスを近似すること,集中質量近似を施すことで,NEDA2.0(JAXAのソーラー電力セイル小型実証機IKAROSの解析に用いた)と比べて並列効率を各段に向上させたものである.これにより,IKAROS2の運動を現実的な時間で解析することが可能となった.ただし,IKAROS2への適用はまだできておらず,解析モデルを作成している段階である. 【テーマ2】自己展開膜面トラスとスピン展開膜の小規模地上試験の実施と相似則構築:当初計画通り,既に定式化済みの相似則の妥当性を実験的に検証し,スピン展開膜については,重要な相似条件を満たしていれば相似性が定性的に成り立つことを見出した.これにより,IKAROS2等,今後の大型スピン膜展開構造の地上実験の新たな方法を見出すことができた.また,これに加えて,自己展開膜面構造の設計法考え,それに基づいて4.4mトラスの展開実験,および,15mブームの伸展実験を実施した結果,展開・伸展は成功し,設計法が妥当であることを示した. 【テーマ3】経験的固有直交分解によるモデル低次元化手法の構築:当初計画通り,IKAROSの低次元化モデルを構築し,IKAROSのノミナル展開運動が10次程度のモードで表現できることを明らかにした.また,それぞれのモードが半径方向の展開スピン等,どのような運動に対応しているかを整理した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で実施したテーマ1については,NEDA3.0をIKAROS2の設計・解析にまだ適用できていない点が,当初計画よりも遅れている.これは,解析コードにおける拘束条件の組み込み法を工夫し,汎用性のあるコードにする部分に時間を要したことにより,IKAROS2の解析モデルの作成が間に合わなかったためである. テーマ2については,当初計画通り,相似則の実験検証を完了させただけでなく,相似条件を全て満たさずとも,相似性が定性的に満たされることを実験から見いだせたことは,当初計画以上の大きな成果である.実際,その相似条件とは重力に関する相似条件であり,地上実験では満足することが困難な条件であるため,相似則構築の大きな障壁となっていたが,H27年度の微小重力実験結果とH27,H28年度の地上実験結果とを比較することで,その相似条件の運動への感度が低いことを見いだせたことで,小規模モデルの地上実験の結果から実機の軌道上での運動を予測できることを示せたことは,重要な進展である.また,これだけでなく,バイコンベックスブームを用いた自己展開膜構造の設計法をまとめ,それに基づいて作成した4.4mモデルの展開実験と15mブームの伸展実験に成功したことは,当初計画以上の進展である. テーマ3についても,当初計画を完了した.特に,IKAROSのモードを明らかにし,特に,主たるモード(運動に対する寄与率が高いモード)がどのような運動に対応しているかを見出すことができたことは,今後のIKAROS2等の設計に重要な指針を与えるものになる.実際,設計パラメータの変動に対するそれらのモードの寄与率の感度を調べることで,各設計パラメータの許容範囲を定量的に示すことができるようになる. 以上より,NEDA3.0のIKAROS2への適用を除いては,全て当初の計画以上に進展しており,総合的にみて,順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,大型膜面やケーブルなどのゴッサマー構造と伸展ブームや宇宙機本体などの支持構造から成る大型ゴッサマー多体宇宙構造物の高速・高精度の運動解析理論の構築と,展開などの運動の予測法の確立,それによる運動の本質の理解を目的とし,次の3つのテーマを設定し,実施するものである.【テーマ1】解析コードNEDA3.0の完成とIKAROS2の設計・解析への適用,【テーマ2】自己展開膜面トラスとスピン展開膜の小規模地上実験の実施と相似則構築,【テーマ3】経験的固有直交分解によるモデル低次元化手法の構築. これらのうち,テーマ1のIKAROS2の設計・解析への適用だけが遅れており,その他は既に完了し,かつ,当初予定以上の結果を得ている.そこで,今後は,テーマ1の完了に向けて集中的に研究を進める.実際,時間を要するのはIKAROS2の解析モデルの作成の部分であり,それは,モデルの妥当性確認を慎重に行う必要があるためであるので,この部分を迅速に行い,テーマ1を完了させる. と同時に,テーマ2,3を進めていく中で新たに見出された研究課題,その中でも,特に,超小型衛星を用いた自己展開膜構造の宇宙実証方法の提案,拘束条件を考慮した低次元モデルの構築法,相似パラメータの展開運動に対する感度の理論的導出法,および,数値計算による相似則の検証法の構築を研究する.そして,これらを発展させた研究テーマをH30年度に基盤研究(A)や(S)に申請することを念頭に,次世代の先進宇宙構造物システムに関する研究会を立ち上げ,国内の宇宙構造物関連の構造力学・材料工学・制御工学・システム工学の研究者を集める.そこでは,科研費申請に関する議論を行うだけでなく,先進宇宙構造物システムの技術実証や宇宙科学ミッション,地球観測ミッション等への適用を具体的に検討し,それを通じて,今後のこの分野を先導する研究グループをつくる.
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Research Products
(18 results)