2015 Fiscal Year Annual Research Report
地下微生物の定量的in-situリアルタイムモニタリング技術の開発
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15H04227
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菅井 裕一 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70333862)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 微生物 / フローサイトメトリー / 坑井 / モニタリング / 地下 / 原位置 / リアルタイム |
Outline of Annual Research Achievements |
微生物を利用した地下資源生産や地下環境修復を、より効率良く操業するためには、地下における目的微生物の棲息状況を精度良く迅速に把握する技術が必要である。本研究では、フローサイトメトリーにより地下原位置でリアルタイムに目的微生物を計数する技術の可能性を検討した。フローサイトメトリーでは、試料中の微生物細胞を流体力学的絞り込みによって一列に整列させ、細胞にレーザー光を照射して生じる前方散乱光、側方散乱光ならびに蛍光をそれぞれ検出する。各光の強度は微生物細胞の大きさ、細胞内の構造および蛍光物質の種類と量を反映するため、微生物の種類が異なれば各光の強度が異なり、目的微生物を選択的に計数することが可能となる。 地下資源の生産に関わる油分解菌、メタン菌および硫酸塩還元菌を蛍光分光光度計分析ならびにフローサイトメトリー解析に供し、これらの微生物の選択的な検出可能性を検討した。各純粋培養液を用いた解析によれば、メタン菌は他の菌に比べて特徴的な蛍光を発すること、ならびに油分解菌は他の菌に比べて特徴的な側方散乱光を発することが示された。これらの微生物を培養した培地を用いて、油層水中の多種の雑菌を培養し、各微生物の純粋培養液と雑菌培養液とを比率を変化させて混合し、それぞれ蛍光分光光度計分析ならびにフローサイトメトリー解析に供した。その結果、前述した純粋培養液の解析結果と同様に、メタン菌は蛍光強度から雑菌との判別が可能であり、その選択的検出の可能性が示唆された。また、油分解菌は、その存在比率と側方散乱光強度その間に相関性が認められ、雑菌と混在した条件下における油分解菌の選択的検出が可能であることが示された。一方、硫酸塩還元菌については、各種散乱光ならびに蛍光によっても雑菌との明確な判別を行なうことが困難であったため、今後の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、微生物を利用した地下資源生産技術や地下環境修復技術に関する文献調査を行ない、応募者がこれまでの研究で分離してきた微生物も含め、これらの分野において有益と評価されている微生物を数種類選定し、それらの蛍光分光光度計分析を行なって、それらの選択的な定量が可能な励起光波長ならびに検出蛍光波長を決定することを計画していた。 上述した研究計画に従って、まず本研究の目的微生物として、地下資源開発に重要な役割を担う、石油の増進回収に有益な油分解菌、油層内で硫化水素を生成し生産障害をもたらす硫酸塩還元菌ならびに天然ガスの起源であるメタン菌が選定され、各微生物の純水培養液を蛍光分光光度計分析に供して、各微生物の選択的な定量に適した励起光波長および検出蛍光波長を明らかにできた。さらに、油層水中の雑菌を各微生物培養用の培地で培養した雑菌培養液と、各微生物の純粋培養液とを混合した試料についても蛍光分光光度計分析を実施して、とりわけメタン菌については雑菌との判別可能性を明らかにしている。さらに、上述した平成27年度の研究計画よりも研究を進め、フローサイトメトリー解析において蛍光とともに検出される前方散乱光および側方散乱光による各微生物の選択的検出可能性についても、他機関においてフローサイトメーターを利用させていただくことにより検討した。その結果、散乱光分析によっても各微生物の選択的検出の可能性を見出すことができ、次年度以降に予定しているフローサイトメトリー解析条件の策定を完了することができた。このことから、当初の計画以上に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究によれば、本研究で目的微生物として選定した3種類の微生物のうち、メタン菌および油分解菌を、それぞれ蛍光強度ならびに側方散乱光強度から選択的に検出できる可能性が示された。今後は、これらの微生物の選択的検出精度をさらに向上させるため、照射する励起法波長ならびに検出する蛍光波長をさらに細かい刻みで検討したり、フローサイトメトリー解析において各微生物の検出に影響を及ぼすノイズの取り扱いについて、検討する予定である。また、平成27年度の研究によっては選択的な検出可能性が見いだせなかった硫酸塩還元菌も、地下資源開発においては重要な微生物であり、その選択的検出条件を引き続き検討する。硫酸塩還元菌をそのまま蛍光および散乱光分析に供しても雑菌との判別が困難であったため、選択的な染色を施して各種分析に供することなどにより、その選択性を向上させる手法を検討する。さらに、当初の研究計画に比べ、計画以上の進展が認められており、平成28年度には29年度に予定しているフローサイトメトリーの機構を取り込んだ、坑井内に導入可能なサイズのデバイスに関する設計にも着手し始める予定である。
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Research Products
(1 results)