2015 Fiscal Year Annual Research Report
海底地殻変動と海水温変動の高精度検出に向けた統合解析:高密度海域観測網の新活用
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15H04228
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
有吉 慶介 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 技術研究員 (20436075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 憲 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (40421888)
長谷川 拓也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (40466256)
木戸 元之 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (10400235)
松本 浩幸 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 技術研究員 (80360759)
中田 令子 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 特任技術研究員 (00552499)
五十嵐 俊博 東京大学, 地震研究所, 助教 (10334286)
内田 直希 東北大学, 理学部, 助教 (80374908)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海溝型巨大地震 / スロー地震 / 海流変動 / 機器ドリフト |
Outline of Annual Research Achievements |
東南海地震の震源域直上に設置された海底観測網(DONET)には,地震計のみならず,海底圧力計が設置されている.そのため,震源域近傍で生じる,プレート間固着の剥がれる過程を捉えることが期待される.一方で,海底圧力計の値は,海洋変動や機器ドリフトなども含まれており,地殻変動と誤認する可能性がある.そこで本研究では,海底圧力計の時系列データから,海底地殻変動,海流変動,機器ドリフトの成分に分離することを第一目的としている. 一般に,海洋変動は数年~十年以上の時間スケールで変化するものも含まれているため,そのような長期変動成分とドリフト成分を分離するためには,観測期間が長い方が好ましい.そこで,DONETに加え,釧路沖のデータも活用することにした.これらの知見によって,東北沖で海底観測網が展開されているS-netへの活用も期待される. 今年度では,DONETと釧路沖の海底圧力計を解析した結果,海洋変動を捉えることに成功した.このことは,従来の防災目的で設置された海底圧力計が,海洋変動の検知にも活用出来ることを意味する.また,防災上の観点からしても,海底地殻変動との誤認を回避するために,地震学・津波工学・海洋物理学など,多岐にわたる研究者が統合的に解析する重要性を科学的に裏付けることになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DONET直上でのCTD (Conductivity Temperature Depth profiler) 観測計画については,所内公募乗船研究の調整が間に合わなかったため,急遽,一般公募乗船研究に応募したものの,採択されなかった.そのため,今年度と来年度は,DONET直上でのCTD観測が出来ない場合を想定し,代替策として,木戸らが乗船する東北沖でCTDと投機型のXCTD観測を実施することにした. 海底圧力計の解析については,今年度は釧路沖のケーブルに絞る予定であったが,来年度のCTD観測が実施されないことから,その対応策として,DONETの圧力計解析も前倒しで行うことにした.その結果,釧路沖では,海面高度と海底圧力計について同期した変化が一般には続くが,海底圧力が海面高度から有意にずれる期間では,中規模渦が発生していることが確かめられた.また,DONET圧力計では,スロー地震と似たような変動が海底圧力計から検出されたが,オフセットがゼロであり,時空間スケールを検証した結果,黒潮の流軸の南北変動から説明がつくことが分かった. また,DONETに向かって上流側にある四国沖に2004年-2006年に設置した海底圧力計 (PIES) データの解析では,黒潮大蛇行の形成に伴う海面高度の上昇に約2ヵ月遅れて海底圧力が増加することが分かった 上記の海底圧力変動期間内に,相似地震の解析を確かめたところ,有意な活発化が見られなかったことから,海底地殻変動ではないことを確かめた. また,機器ドリフトについては,室内環境実験から,特性を事前に推定できる場合もあるが,必ずしも単純ではないことが確かめられた. これらを合わせると,予定より早い圧力計解析と乗船計画の延期が相殺されて,予定通りと評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も,CTD観測実施に向けて,所内および公募の乗船研究計画を提案する.一方で,それだけでは実施回数を重ねることが事実上難しいことから,分担者が乗船する機会にも,CTDおよびXCTDの観測を行う.これにより,日向灘,室戸沖,熊野灘,東北沖,釧路沖などを広域的にカバーすることが期待できる. 海底圧力計の解析は,上記の観測データに加えて,定常線観測や衛星観測なども活用し,海流変動によるものなのかを判断する.また,東北沖の相似地震解析から確かめられた周期的なスロースリップについては,機器ドリフト特性から切り分けられるのかを室内実験から検討を行う. スロー地震に伴う海底地殻変動については,地震サイクルの数値シミュレーションモデルを高度化させることにより,定量的な評価を試みる.
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Research Products
(11 results)