2015 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系における放射線誘起非平衡電子相を用いた物性改質技術の開拓
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15H04238
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浅井 圭介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60231859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越水 正典 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40374962)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 超伝導 / 放射線照射 / 電子励起 / キャリアドープ |
Outline of Annual Research Achievements |
強相関電子系に対する放射線照射効果のうち、特に電子相に対する効果について探究し、その応用可能性を検討した。特に、1.超伝導体への照射による、準安定的な超伝導相の創出と、2.磁性酸化物への照射による絶縁体金属転移、の2つを対象とした研究を進める。放射線照射により、電子状態に生じる変化を、電子状態と結晶構造の双方の観点から解析し、その基礎過程を解明することを目的とした。この知見を利用し、より応用に適した材料を設計・開発する。この一連の研究により、放射線工学と強相関電子系物質科学との学際領域において、放射線による電子相制御という非常に独自性の高い技術を確立し、強相関電子系の伝導特性制御法としての応用可能性を開拓することを目指す。 今年度には、YBCOおよびGdBCO系超伝導体について、放射線照射効果を解析した。X線やγ線の照射後、SQUIDを用いて磁化率測定を行い、超伝導に起因する反磁性の寄与の温度依存性を解析した。その結果、γ線やX線の照射により、超伝導転移温度が1 K程度上昇することと、超伝導領域の増大を示唆する、反磁性の寄与の増大が観測された。また、これらの照射効果の持続時間は数時間程度であることも明らかとなった。このことは、γ線やX線の照射による変化が永続的ではなく、何らかの準安定的な励起状態に起因するものであることを示している。また、照射後のラマン分光の結果からは、酸素空孔への電子トラップが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線照射後の超伝導特性の変化を磁化率測定により明らかにすることができた。また、ラマン分光によっても、特性変化機構の情報が得られた。YBCOとGdBCOという、代表的な酸化物超伝導体に対して、肯定的な放射線照射効果の存在を実証できたため、順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度には、超伝導体として、Bi系の酸化物、およびMgB2を対象として研究を進める。今年度と同様、磁化率測定とラマン分光を駆使するほか、他の構造解析手法による基礎過程解明も進める。
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Research Products
(4 results)