2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H04240
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 秀一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90262047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮部 昌文 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 廃炉国際共同研究センター, 研究主幹 (20354863)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レーザー / 原子・イオン / 同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
イオントラップを用いた単一イオンの観測 極微量同位体分光・分析を行うには、その極微量の同位体を高い同位体選択性および効率によりイオン化した後、イオントラップ・レーザー冷却を用いて捕獲イオンを結晶化させ個別イオンとして観測する。そのためには単一レベルでのイオンから発生する蛍光観測が必要である。開発したイオントラップにおいて、波長・光強度を制御したレーザー光により単一原子レベルでのイオン化を行い、イオントラップ中に導入し捕獲する。さらにレーザー光源の周波数安定化や観測系の高感度化などにより、より高い精度で同位体をイオン化するとともに捕獲観測を行った。
レーザー共鳴イオン化に用いる新たな光源の開発 中性Ca原子の多段階共鳴イオン化のためにはさまざまなスキームが存在するが、これまで基底状態の4s2 1S0から4s4p 1P1に対応する423 nm、4s4p1P1から4s4d 1D2に対応する732 nmの半導体レーザーの設計・製作を行ってきた。ここから更に4s4d 1D2から4s39f 1F3に対応する837 nmの半導体レーザーを用いることで、3段階での同位体シフトの利用が可能になることから、中性Ca原子を更に同位体選択的に励起・イオン化することが可能となる。これには、高出力のレーザー光が必要であることから、外部共振器型半導体レーザーシステム(ECDL)に加えて、その光をシード光として増幅するテーパーアンプ半導体を導入し、波長制御された高出力のレーザー光を得るシステムの設計・製作を行った。その結果、所望の波長において1W以上の高出力を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終目標である交流電場を利用した線形四重極で実現される質量電荷比による制御と、レーザー波長制御を用いて単一イオンレベルでの極微量同位体分光・分析を行うために、現在までに少数イオンの捕獲観測に成功、またイオン化においても2段の共鳴での微量同位体のイオン化・さらなる共鳴スキームに対応した光源開発に成功している。 よってこれから最終目標までには、装置のさらなる高感度化および、極微量の同位体のイオン化スキームの同位体選択性の評価・また質量電荷比の制御で除去できない同重体のイオントラップへの影響評価が必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
カルシウムの多段共鳴イオン化の実現 これまで中性カルシウムの共鳴イオン化には基底状態の4s2 1S0 → 4s4p 1P1 → 4s4d 1D2の2つの共鳴を用いたイオン化を行っていたが、さらに4s4d 1D2からリュードベリ準位への励起に対応する光源を開発した。この光源を用いることで、3つの共鳴を利用し更に中性カルシウム原子を同位体選択的に励起・イオン化することが可能となる。そこで、新たに開発した光源を組み合わせ選択的なイオン化を実現する。
同重体イオンの影響評価 ICP-MS は質量分析部により、質量分離が可能であるが、原理的には同重体を区別することはできない。開発している装置においては目的同位体と同じ質量を持つ同重体もトラップに導入されることになる。レーザー冷却はこのうち目的同位体に対してのみ有効であるが、同重体は冷却妨害イオンとなる。そこで、まず目的同位体の捕獲・冷却のメカニズムの実験的検討を行う。さらにカルシウムに対する同重体を用いることで同重体の影響を定量的に検討する。
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Research Products
(4 results)