2015 Fiscal Year Annual Research Report
原子核乾板を用いた宇宙線ミューオンラジオグラフィ技術の高度化と新分野への応用展開
Project/Area Number |
15H04241
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森島 邦博 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (30377915)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大城 道則 駒澤大学, 文学部, 教授 (00365529)
中野 敏行 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (50345849)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙線 / ラジオグラフィ / ミューオン / 原子核乾板 / 非破壊検査 / 考古学遺跡 / ピラミッド / 地下空洞調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
宇宙線ラジオグラフィ技術の高度化及び実証試験を進めた。
技術の高度化に関して、原子核乾板のさまざまな使用環境下における長期特性(温度特性、感度劣化)の向上を狙い、素粒子検出部である原子核乳剤中の臭銀結晶とゼラチンの体積比率の最適化、有効な化学薬品のスクリーニング、臭化銀結晶のサイズ依存性の理解を進めた。その結果、潜像退行特性の改善に成功した。臭化銀結晶のサイズ依存性の試験では、従来の原子核乾板で用いている200nm結晶よりも約4倍大きな800nm結晶の粒子形成に成功し、感度とサイズ依存性の理解を進め、増感の最適化を進めた。原子核乾板の製造技術開発も進めた。具体的には、塗布膜厚で1mmという通常の写真フィルムよりも厚い手塗り塗布から乾燥までの手法確立、効率化、および高速化を行った。更に、製造の機械化を進めるための要素技術(アプリケータ塗布、乾燥状態の測定手法など)の開発を進めた。
技術の実証試験として、開発した原子核乾板を約15平方メートル作成し、エジプトのピラミッド内部への設置を行い、既知の玄室のイメージングを行った。試験はダハシュールの屈折ピラミッドで行い、2015年12月から40日間、ミューオンを蓄積し、エジプト・カイロに構築した現像施設で現像を行い、名古屋大学の超高速読み取り装置でミューオン軌跡のデジタルデータ化を行った。その解析により、100mを越える考古学遺跡内部の玄室(空間)を初めて明確にイメージングする事に成功した。この他、1.大谷石採石場跡(地下空洞調査)、2.名古屋大学NUBRIDGE(コンクリート構造体)、3.中部電力浜岡原子力発電所2号機(原子炉圧力容器および格納容器下部)に原子核乾板を設置して実証試験を実施した。更に、これらの試験の結果と期待されるミューオンイメージとの比較のために高速な宇宙線イメージシミュレーションプログラムの開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた研究計画の課題実施の他、エジプト・ピラミッドの観測により100mを越える岩盤中の空洞(屈折ピラミッドの玄室)を明確にイメージングする事に初めて成功した。これは、宇宙線ラジオグラフィによる初めての実証結果であり、ピラミッドの他にも様々な考古学遺跡調査への適用可能性を示した。また、原子核乾板の技術開発では、臭化銀結晶サイズを大きくする事で結晶感度の大幅な向上を実現し、読み取り装置の効率向上、高速化などへの展望を拓いた。
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Strategy for Future Research Activity |
宇宙線ラジオグラフィに用いる宇宙線の詳細な理解のための研究を進める。具体的には、観測場所による宇宙線のエネルギースペクトルの差異(例えば名古屋とエジプトでは緯度、経度が異なる。また、富士山の観測では高度が異なる。)を観測対象付近で実測定する技術の開発および確立を進める。これにより、さまざまな場所や観測対象におけるイメージング精度の向上やノイズ成分の理解を進める。
さらに、原子核乾板に時間情報を付与するための大面積原子核乾板移動機構の開発を行い、イメージングにおいてノイズとなる他粒子種の同定およびシャワー成分などの実測定により、ミューオンイメージングおよび密度測定の精度向上を進める。この他、原子核乾板の長期特性の向上および粒子サイズが大きな原子核乾板の開発、機械塗布の要素技術の開発を更に進める。
技術の実証試験として、考古学遺跡調査、地下空洞調査、コンクリート構造調査、原子炉調査などを通し、未知の空洞や物質の検出分解能および測定対象の密度測定分解能などの評価を行う。また、これまで開発してきた高速シミュレーションプログラムに加えてGEANT4やPHITSなどのシミュレーションコードを用いた宇宙線シミュレーションの開発を進める。
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Remarks |
上記ページの執筆、管理を行っている。
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Research Products
(23 results)