2016 Fiscal Year Annual Research Report
固体酸化物形燃料電池の大容量化に資する電気絶縁信頼性向上
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15H04249
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石田 政義 筑波大学, システム情報系, 教授 (30272173)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花田 信子 筑波大学, システム情報系, 助教 (00606634)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アルミナ / 電気伝導率 / 水素雰囲気 / 空間電荷分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、高温型燃料電池主絶縁への応用に向け、無機絶縁材料として広く用いられているアルミナに関して、水素雰囲気下での漏れ電流の経時変化と材料変性との関係を解明した。市販のアルミナ平板試料に対してPt電極やセラミックス製測定セルを適用し、不純物の侵入を可能な限り避けたうえで、高温中において100時間の直流課電実験を行った。空気雰囲気と比べ、水素雰囲気においてアルミナの電気伝導率は1桁ほど低下した。印加電界に対する電気伝導率特性では、空気雰囲気とは異なり、電界増加に伴い電気伝導率が増加した。実験終了後、電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いて分析を行ったところ、Naなどの不純物析出は観測されなかった。電気伝導のキャリアが雰囲気によって異なることが示唆された。キャリアの変化が電気伝導率の減少と関係していると考えられる。 また、長期課電による無機絶縁材の絶縁破壊経路を明らかにして絶縁劣化メカニズムを解明するため、パルス静電応力法による空間電荷分布測定を実施した。アルミナなどの無機材料の測定では電極界面に誘導電荷が見られず電極近傍にヘテロ電荷のような電荷が観測される。このヘテロ電荷とセラミックスのイオン伝導性の関係を確認するため、高温で高電圧を印加しイオンを偏析させたアルミナ試料を作製し、常温で空間電荷分布を測定した。その結果、何も処理をしていないアルミナの電荷分布と異なる分布が得られた。このことから電極近傍に見られる電荷はヘテロ電荷であると示唆された。誘導電荷が観測されない原因については現在調査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
無機絶縁材料の高温特性評価は順調に実験を進め、雰囲気の違いによる電気伝導率の変化を明らかにした。実験後、試料全体が乳白色から白色に変色していた。構造の変化を価人するためにX線回折測定をしたところ、構造変化は見られないものの配向等に変化が見られた。変色と電気伝導率の変化が関連していると示唆された。EPMAによる分析では空気雰囲気でみられた不純物の偏析は見られず、これは雰囲気によるキャリア変化が影響しているものと考えられる。今後、詳しい調査が必要となる。 無機材料の電荷分布および蓄積特性を解明するために、アルミナを用いた空間電荷測定を行った。高温で一度直流課電実験を行った試料と行ってない試料で比較実験を行った。その結果、高温で処理をした試料は電極の結合剤であるBiイオンの偏析が起きており、空間電荷分布にもその影響が現れていた。このことから無機材料の電極近傍に見られる電荷ピークはセラミックスのイオン伝導性に起因するものと示唆された。これは高分子材料の空間電荷測定では見られないものである。このことから誘導電荷が観測されない原因については無機材料が持つイオン伝導性の影響が考えられる。 上記のとおり高温水素雰囲気での空間電荷測定方法の開発に手間取り、若干遅れ気味であったが、測定装置の準備は整ったので、来年度は鋭意測定を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は絶縁体中を流れる電流に着目し、無機材料の高温・水素雰囲気中での長期課電特性を調査し、雰囲気の違いが電気伝導に与える変化を明らかにした。また、長期課電による無機絶縁材の絶縁破壊経路を明らかにして絶縁劣化メカニズムを解明するため、アルミナの空間電荷分布の形成要因の検討を行った。 来年度は今年度に引き続き、水素雰囲気と直流課電が材料変性に与える影響を解明する。また、沿面における絶縁特性は未開であることから、調査を行っていく。加えて、蓄積モデルを構築しシミュレーションによりさらなる検討を行い、現象の解明を図る。測定手法を改善し、無機材料に適した空間電荷分布測定を行う。これらにより絶縁破壊起点や破壊経路を明らかにする。
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Research Products
(3 results)