2015 Fiscal Year Annual Research Report
革新的蓄電池の実現に向けたナノ構造・ナノ複合体硫黄系高容量正極材料の創製
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15H04251
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
谷口 泉 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (00217126)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 硫化銅 / 噴霧熱分解法 / 正極材料 / 五酸化バナジウム / リチウム二次電池 / リチウム硫黄電池 / ナノ構造材料 / ナノ複合体材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
原料塩として硝酸銅三水和物とチオ尿素を用い、CuとSのモル比の異なる原料を調製し、噴霧熱分解法によりCu2Sの合成を様々な噴霧熱分解温度で行った。さらに、必要に応じて、その後二次焼成を行った。その結果、噴霧熱分解温度が400℃~700℃の条件では、目的物質の量論比で調製した原料溶液からはCu2Sが合成できず、CuとCu1.96Sの混合物が得られた。この原因は、合成段階でチオ尿素がCu2+と反応せずに熱分解してしまうことが原因だと考え、原料溶液にSを目的物質の量論比よりも過剰に加え、Cu2Sの合成を試みた。その結果、400℃で噴霧熱分解した試料を460℃で2時間、焼成することで量論組成のCu2Sの合成に成功した。 そこで、この試料を正極活物質として、負極に金属リチウムを用いたハーフセルを作製し、充放電試験を行った。その結果、0.1Cの充放電速度において、理論容量の99%相当する335 mAh/gの初期放電容量を得ることが出来た。しかしながら、集電体としてAl箔を用いた場合では、30サイクル以降、サイクル劣化が見られた。そこで、集電体として銅箔を用いて、電池性能評価を行ったところ、サイクル特性を改善することが出来た。さらに、この原因を解明するために、充放電後の電極のX線回折を測定し、電極内での電気化学反応の予測を試みた。 また、平成27年度は、金属硫化物以外に、多孔質ナノ構造V2O5の合成も試みた。この合成には、バナジウムの出発原料であるメタバナジン酸アンモニウムを用い、これを蒸留水に溶解させ、噴霧熱分解法により合成を行った。その結果、原料溶液に硝酸アンモニウムを添加することで、50から200nm程度の細孔を有する多孔質ナノ構造V2O5の合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最初にターゲットにした材料が、非常に電池特性に優れていた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度行った、Exsitu-XRDによる電極内での電気化学反応解析を継続して行い、集電体とCu2Sの電気化学特性の間の関係を明らかにする。また、今年度は噴霧熱分解法を用いて化学量論組成を有するCuSの合成を行う。合成された試料については、その表面形態および内部構造をSEMおよびTEMにより観察する。CuとSの比率についてはICP発光分析により確認する。結晶相の同定については粉末X線回折を用いて行う。これらの分析により、化学量論組成を有するCuSの合成条件を探索する。合成した材料の電気化学特性は、コインタイプセルを用いて評価する。さらに、昨年と同様な方法で、充放電時における電極内での電気化学反応を、Exsitu-XRDを用いて解析する。以上の分析結果より、硫化銅(CuxS)の化学組成と電気化学反応の関係を明らかにすると共に、電気化学特性に優れた組成比の探索を行う。 また、昨年度合成に成功した多孔質ナノ構造V2O5のリチウム二次電池特性の評価を行うと共に、原料溶液に硝酸アンモニウムを添加することによるV2O5の細孔径の制御法を確立する。さらに、この細孔内に硫黄を含浸させ、硫黄とV2O5の複合体の合成を試みると共に、その電気化学特性についても評価を行う。
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Research Products
(3 results)