2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H04262
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
磯田 昌岐 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 教授 (90466029)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自己 / 他者 / 報酬 / ドーパミン神経細胞 / 前頭葉内側皮質 / サル / 単一神経細胞活動記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトやサルなどの社会的動物は,自らの報酬のみならず,他者が得る報酬に対しても関心を持つ。本研究では,自己と他者の報酬に関する情報が脳内でどのようにモニターされるのか,そして自己報酬の価値評価が他者報酬に関する情報によってどのように修飾されるのかを明らかにするため,マカクザルをモデルとする行動解析および電気生理学的解析を行った。本年度は,中脳のドーパミン神経細胞の活動を記録・解析した。まず,対面する2頭のマカクザルに対し,自己と他者の認知下で古典的条件づけを行った。リッキング運動を指標とした報酬期待行動の振幅は,自己の報酬確率とは正の相関を,他者の報酬確率とは負の相関を示すことを明らかにした。続いて,中脳の黒質緻密部および腹側被蓋野のドーパミン神経細胞から単一神経細胞活動を記録した。ドーパミン神経細胞は,条件刺激提示後に一過性の応答を示したが,その振幅は自己の報酬確率とは正の相関を,他者の報酬確率とは負の相関を示した。前頭葉内側皮質とは異なり,他者の報酬情報のみを選択的に表現する細胞はなかった。以上より,前頭葉内側皮質細胞は自他の報酬情報を区別して表現するのに対し,中脳ドーパミン神経細胞は自他の報酬情報を統合して報酬の主観的価値を表現することが示唆された。これらの研究成果を国内外の学会やシンポジウム等で発表した。今後は,大脳皮質と皮質下の報酬情報がどのようなメカニズムで生成・統合されるのかを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画通りに行動パラダイムを開発し,行動学的および電気生理学的解析を行った。そして,自己と他者の報酬情報処理における中脳ドーパミン神経細胞の役割と,前頭葉内側皮質との機能的差異を明らかにした。得られた研究成果を国内外の学会やシンポジウム等で発表した。以上より,本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究により,自己と他者の報酬情報を統合した主観的価値情報が,中脳の単一ドーパミン神経細胞レベルで表現されていることが明らかとなった。今後は,大脳皮質とは異なるドーパミン神経細胞の機能的役割が,どのような神経回路基盤によって生まれるのかを明らかにする。また,研究成果を国内学の学会や学術誌上において発表する。
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Research Products
(16 results)