2015 Fiscal Year Annual Research Report
自由行動下マウスを用いた海馬神経新生現象への統合的アプローチ
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15H04267
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神野 尚三 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10325524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古江 秀昌 生理学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (20304884)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経新生 / 海馬 / ダイゼイン / 老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究では、海馬の神経新生現象の制御機序の解析を進めた。先行研究によって、新生ニューロンの産生や成熟は、炎症性サイトカインやホルモンの影響を受けており、加齢に伴って減少することが報告されているが、その制御機序については不明な点も多い。このため我々は、初老期メスマウス (10カ月齢) に大豆イソフラボンの一種であるダイゼイン (30mg/kg) を28日間連続で腹腔内投与し、海馬の新生神経新生現象の作用について、免疫組織化学的な検討を行った。実験には7種類の神経新生現象関連分子マーカーを使用し、認知や記憶を担う背側海馬と、情動を担う腹側海馬の比較・検討を行った。ステレオロジー定量解析の結果、神経幹細胞や前期一過性増幅前駆細胞の空間分布密度は、ダイゼイン投与によって変化しないことが明らかになった。一方で、後期一過性増幅前駆細胞や神経前駆細胞、幼若顆粒細胞の空間分布密度はダイゼイン投与によって有意に増加した。また、分裂細胞の空間分布密度がダイゼイン投与によって増加したのに対して、アポトーシス細胞に変化は認められなかった。これらから、ダイゼインは初老期メスマウスの海馬において、神経新生現象の後期の細胞の分裂を促進し、密度を増加させる可能性が示唆された。次に我々は、ダイゼインのシナプス形成に対する作用について、形態学的な検討を行った。新生顆粒細胞の樹状突起を三次元トレーシングした結果、分枝の数や樹状突起の全長の進展が認められた。また、背側海馬と腹側海馬に対するダイゼインの作用を比較した結果、新生顆粒細胞の密度増加効果、樹状突起の分岐の数、二次・三次突起の長さの増加効果などはいずれも背側海馬の方が大きいこと明らかになった。これらの結果は、ダイゼインが初老期メスマウスの海馬神経新生現象を時期・部位特異的に増強する作用を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海馬神経新生の新たな制御機序についての研究が進展しており、おおむね順調に進行している。結果の一部については、平成28年度日本農芸化学学会の大会シンポジウムで発表し、現在国際誌に投稿備中である。また、自由行動下マウス海馬からの記録についても実験を進めており、ウィルストレーサーによる予備的なデータの取得に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
1) レトロウィルスとトレーサーを入れる時期及び間隔を変えることによって神経新生の成熟ステージをダイセクトし、長軸方向に沿って分布する海馬の各神経回路への新生ニューロンの組み込みプロセスを超微形態レベルで解析する。2) 頭部固定麻酔下マウスを用いて新生ニューロンのin vivoパッチクランプ記録を行い、シナプスレベルでその電気生理学的特性を解析する。3) 頭部固定麻酔下マウスを用いて傍細胞記録を行い、新生ニューロンによる海馬神経回路の活動性 (局所フィールド電位) の制御機序を電気生理学的側面と解剖学的側面の両面からアプローチする。4) 自由行動下のマウス海馬からマイウロドライブシステムを用いて傍細胞記録を行い、新生ニューロンと、それらとシナプス結合を有する海馬のニューロンについて、電気生理学的特性と形態学的特性を抽出し、海馬神経回路の活動性と行動様態の相関を解析する。5) 光遺伝学によって新生ニューロンの活動性を制御することで生じる行動変容と、海馬の各神経回路の活動性の変化を解析する。これによって、新生ニューロンによる海馬神経回路と高次脳機能の制御機序を統合的に明らかにする。
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Research Products
(15 results)