2017 Fiscal Year Annual Research Report
自由行動下マウスを用いた海馬神経新生現象への統合的アプローチ
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15H04267
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神野 尚三 九州大学, 医学研究院, 教授 (10325524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古江 秀昌 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (20304884)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経新生 / 海馬 / コンドロイチン硫酸 / enriched environment |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究では、海馬歯状回に発現している細胞外マトリックスの一種であるコンドロイチン硫酸に着目し、組織化学的・行動学的な解析を行った。実験には、chondroitinase ABC (chABC)によるコンドロイチン硫酸の分解、コンドロイチン硫酸のHPLCによる定量、行動実験、コンドロイチン硫酸合成酵素の一部を欠損させたT1KOマウスなどを組み合わせて、集学的な検討を行った。海馬歯状回にchABCを局所注入すると、レクチン染色によるコンドロイチン硫酸の染色性が消失し、神経前駆細胞の数や新生顆粒細胞、分裂期の細胞の数が減少する一方で、神経幹細胞の数やアストロサイトの数に変化はなかった。新生顆粒細胞の三次元再構築を行った結果、樹状突起の伸長や、分岐がchABC処理によって減少していることが示された。Western blottingでは、chABCの局所注入を行った海馬歯状回ではWnt-3の発現量に変化はないが、β-cateninの発現が減少していた。新規物体認知試験では、chABC処理によって記憶保持が低下することが示された。HPLCによる解析では、豊かな環境 (enriched environment, EE) で飼育されたマウスにおいて海馬歯状回のコンドロイチン硫酸 (CS-4) の発現量が増加し、拘束ストレスを与えたマウスではCS-4の発現量が減少していることが明らかになった。コンドロイチン硫酸合成酵素の一部を欠損したマウス (T1KOマウス) では、海馬歯状回におけるコンドロイチン硫酸の染色性が低下し、EEによる神経新生の促進効果が抑制されていた。これらの結果は、海馬歯状回の細胞外マトリックスを構成しているコンドロイチン硫酸は成体海馬神経新生の制御因子であり、EEやストレスによる成体海馬神経新生の促進や抑制に関わっていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成体海馬神経新生の新たな制御機序についての研究が進展しており、おおむね順調に進行している。研究の一部の成果については、既に論文に投稿し、掲載に向けて改定中である。また、自由行動下マウスを用いた実験や、ウィルストレーサーによる標識についても検討が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究をさらに発展させ、海馬歯状回の細胞外マトリックスの一種であるポリシアル酸による成体海馬神経新生の制御機序を検討する。2) ポリシアル酸分解酵素 (Endo-N) を海馬歯状回に局所注入してポリシアル酸を分解し、成体海馬神経新生の変化と新規物体試験やオープンフィールド試験による海馬神経回路への組み込み様式の変化を超微形態レベルで明らかにする。2) 拘束ストレスやEE、抗うつ薬などによる海馬歯状回におけるポリシアル酸の発現変動を明らかにする。3) Endo-Nによりポリシアル酸の分解を行ったマウスを用いて、頭部固定麻酔下に新生顆粒細胞から傍細胞記録を行い、ポリシアル酸分解による成体海馬神経新生の変化を電気生理学的側面と解剖学的側面の両面からアプローチする。4) 海馬歯状回のポリシアル酸を分解したマウスに拘束ストレスやEE、抗うつ薬などを与え、新規物体試験やオープンフィールド試験から認知や情動の変化を捉える。さらに、自由行動下のマウス海馬から細胞外記録を行い、海馬神経回路の活動性と行動様態のリンクを明らかにする。
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Research Products
(9 results)