2016 Fiscal Year Annual Research Report
Establishing model mouse for anxiety disorders using a novel wild-derived heterogeneous stock
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15H04289
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
小出 剛 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 准教授 (20221955)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マウス / アウトブレッドストック / 量的形質 / 行動 / 家畜化 / 選択交配 / 遺伝子 / マッピング |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、2つの近交系を交配して作製したF2集団などを用いた多因子解析が行われてきた。しかし、この方法では遺伝子同定に向けた十分な精度での遺伝解析ができない問題があった。そこで、8つの近交系を交配して作製した遺伝的に多様なマウス集団「ヘテロジニアスストック(以下HS)」が注目されている。このHSの特徴は、集団内のマウスが持つ遺伝子は8つの親系統のいずれかに由来すること、多世代にわたる交配でゲノム内組換えが蓄積し高い遺伝的精度と多様性を得られることである。しかし、既存のHSは実験用系統のみから作出されたことから多様性が限定され、またHSを使った多因子形質の遺伝解析の方法論は未開発のままであった。われわれは8つの野生系統を遺伝的に混合した野生由来ヘテロジニアスストック(WHS)を作製し、従順性に関する選択交配を行い、選択群と非選択群の樹立に成功した。これら選択群及び非選択群のマウスについて、ゲノムDNAを用いたSNP解析を行い、そのデータを用いて遺伝的解析を行うことで、マウスの従順性に関する遺伝子座は11番染色体上に存在していることを明らかにした。さらに、遺伝子座の絞り込みを行う目的で、高度な従順性を示すイヌのゲノムを用いて報告されている選択領域のデータと比較解析を行い、従順性に関する3つの候補遺伝子を見出した。現在、ゲノム編集の方法を用いて、遺伝子の改変を行うことで、実際に候補遺伝子が選択群の高い従順性に関わっているか検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、マウスをフィールド内に入れ、そこに挿入した人の手を恐れる反応を測定することでマウスの従順性を調べる方法(従順性テスト)を考案した。野生系統を用いて従順性テストを行った結果、人に対する恐怖反応は実験用系統で低く野生系統で高い傾向があるが、その野生系統の中でも顕著な系統差があることが分かった。さらに、8つの野生系統をもとに交配することで、すべての系統のゲノムを混ぜ合わせた野生由来ヘテロジニアスストック(WHS)の作製を開始した。そのWHSについて、上述の従順性テストの表現型を指標にした選択交配を行った。交配の12世代目において選択群と非選択群で従順性に顕著な差がみられた。選択系と非選択系の集団の個体から抽出したゲノムDNAを用いて、144KマウスGigaMUGAアレイによるゲノムワイドなSNPs解析を行った。すでに、8つの親系統のゲノムSNPsをMegaMUGA arrayを用いて網羅的に解析した結果、ゲノム全体で多数のSNPsの解析が可能であることがすでに分かっており、これらの中で系統特異的SNP情報を用いて遺伝解析が可能となった。これらの集団のマウスを用いたゲノムのSNP解析のデータを用いて遺伝解析を行った結果、従順性に関わる遺伝子座として11番染色体の一部が同定された。さらにイヌゲノムを用いた解析の結果と比較することで3つの候補遺伝子を同定した。さらにゲノム編集の手法を用いて、候補遺伝子の改変を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのWHSを用いた選択交配により、世代を重ねるごとにマウスの従順性が変化した集団ができあがってきた。さらに選択交配により世代を重ねることで、選択群と非選択群との従順性の違いは顕著になり、同時に遺伝的解析の精度も上がると期待できる。20世代程度に世代が進んだ段階で更なる遺伝解析を検討する。さらに選択群と非選択群のマウス個体の脳のサンプルを用いて遺伝子の発現解析を進めている。手法としては、海馬から抽出したRNAサンプルを持ちいてRNA-seqにより発現遺伝子の網羅的解析を進めている。データが得られれば、その選択した行動に影響を与えるあらゆる遺伝子の同定と従順性に関わる遺伝子ネットワークを解明する予定である。
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Research Products
(15 results)