2017 Fiscal Year Annual Research Report
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15H04290
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
糸原 重美 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (60252524)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カルシウムセンサー / トランスジェニックマウス / 多感覚統合 / 興奮性細胞 / 抑制性細胞 / 位相ロック |
Outline of Annual Research Achievements |
注意とは多様で多量の知覚情報を取捨選択する機構である。したがって、多様な知覚情報を統合処理する神経回路の同定とその動態を明らかにすることは重要である。多種多様な情報の処理機構を解析するには、広範囲にわたるネットワークの動態を同時観察する手段を必要とする。この観点で、興奮性細胞もしくは抑制性細胞特異的にカルシウムセンサータンパク質YC2.60を発現するトランスジェニックマウスを作製した。これらのマウスは経頭蓋非侵襲的に大脳皮質全域で両細胞ネットワーク固有のカルシウム動態を観察することを可能とした。FRET反応を利用するYC2.60は、呼吸や心拍などによって生じるノイズ成分の除去を容易とし、信頼性の高い振動の解析を可能とした。フェンタニル麻酔下および覚醒安静下で両ネットワークともに1Hz以下で大脳皮質全域に振動が生じること、その振動の中核として正中頭頂野がハブ様構造を担うことを明らかとした。体性感覚、聴覚、および視覚刺激はそれぞれの一次感覚野における上記振動の位相を刺激依存的にロックさせるが、複数の知覚入力が同期した際には上記ハブ領域でも振動の位相がロックされることを見出した。この現象は興奮性細胞ネットワークで顕著に認められるが、その成立には抑制性細胞ネットワークが関与することも示唆された。この低周波位相ロック現象は多感覚の情報統合機構の一端を担うと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報酬の時間割びき課題は衝動性もしくは固執性を評価する良いパラダイムである。コスト(時間)が報酬の価値が脳のどこで計算されているかよく理解されていない。我々は海馬に主観的価値を表現する細胞が存在することを見出した。また、cAMP-GEF2遺伝子の多様な変異体の解析に進展があった。これらの成果を公表準備中である。TetONシステムによるカルシウムセンサー発現マウスの樹立により、Cre依存的条件変異マウスにおいても細胞種選択的カルシウム動態の解析が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
報酬の主観的価値の形成機構とcAMP-GEF2遺伝子の多様な変異体の解析を深め、それらの結果を公表する。また、TetONシステムによるカルシウムセンサー発現カルシウムセンサートランスジェニックマウスとCre依存的病態モデルマウスと交配し、病態モデルマウスが示す行動学的異常と皮質回路作動特性の関係を解析する。
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Research Products
(4 results)