2016 Fiscal Year Annual Research Report
線溶制御因子よるがん幹細胞の治療抵抗性獲得機構の解明
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15H04301
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
八幡 崇 東海大学, 医学部, 准教授 (10398753)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 白血病幹細胞 / PAI-1 / TGF-beta |
Outline of Annual Research Achievements |
白血病幹細胞は、TGF-beta依存的に薬剤抵抗性を獲得するが、その機序は不明なままであった。我々はニッチから産生されるTGF-betaによって慢性骨髄性白血病(CML)細胞、特にCML幹細胞にPAI-1発現が強く誘導されることをマウス及びヒトにおいて明らかにした。そして、PAI-1発現を欠損あるいは過剰に発現しているCML細胞を作製し抗がん剤感受性を検討したところ、PAI-1発現量の多寡が治療抵抗性を決定することを明らかにした。すなわち、PAI-1発現の高いCML細胞ほど治療抵抗性であることから、TGF-betaの影響を強く受けるCML幹細胞が治療抵抗性を獲得するためにPAI-1が重要な役割を果たしていることが示唆された。そこでPAI-1による治療抵抗性獲得のメカニズムについて検討した。まずPAI-1によって制御される因子を探索したところ、セリンプロテアーゼであるFurinの活性を抑制していることを突き止めた。Furinは様々なタンパク質の前駆体を成熟型に変換する酵素である。細胞が発現するPAI-1がFurinを抑制することにより、細胞が遊走するために重要なMT1-MMPの成熟化が抑制される。つまり、PAI-1によってMT1-MMP発現が抑制されるので、CML幹細胞の遊走能は低下しニッチに留まるようになる。このことが抗がん剤に対して抵抗性を示す原因であることを明らかにした。PAI-1阻害剤はこのPAI-1の活性を抑制するので、Frurinの活性化とMT1-MMP発現の上昇を促す。このことによりCML幹細胞のニッチからの離脱を誘導した。重要なことに、PAI-1阻害剤の投与によりCML幹細胞が効率良く排除され、抗がん剤投与中断後の再発も抑制された。したがって、CML幹細胞をニッチから離脱させ、ニッチの保護効果を減弱させることによる抗がん剤高感受性化がPAI-1阻害剤の作用機序であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白血病細胞のPAI-1による治療抵抗性獲得の機序を明確にし、PAI-1阻害剤によって白血病幹細胞が排除され再発が抑制されるなど、PAI-1阻害剤の有効性を実証する重要な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
PAI-1阻害剤による白血病幹細胞排除のメカニズムについての詳細を明らかにするために、各種接着因子の発現動態や分化誘導能などについて検討する。これらのエビデンスに基づき、白血病の根治療法の確立を目指した臨床試験の実施を目指す。
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Research Products
(4 results)