2016 Fiscal Year Annual Research Report
高機能型低分子二重特異性抗体への革新的がん特異的構造変換デザイン
Project/Area Number |
15H04306
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
浅野 竜太郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80323103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古本 祥三 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 教授 (00375198)
真壁 幸樹 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (20508072)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 蛋白質 / がん / バイオテクノロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞とリンパ球間の架橋による強力な治療効果と、高いがん組織への浸透性を兼ね備えた低分子二重特異性抗体は魅力的な人工抗体である。本研究では、がんで亢進しているプロテアーゼの認識配列を用いることで、がん特異的な高機能型への構造変換デザインを目指している。 前年度に引き続き、Db型Ex3をモデルに、がん細胞特異的に高活性型へと構造変換する新規デザインの開発を進めた。多くのがん細胞で亢進しているプロテアーゼである Matrix metalloproteinase-2(MMP-2)やMMP-9によって切断される認識配列を、リンカーに組み込んだ複数のDb型Ex3の大腸菌用発現ベクターを用いて、それぞれ組換え体を調製、機能評価へと進めた。結果、MMPの認識配列を導入することによるがん細胞傷害活性の低下はみられなかったため、続いて市販のMMPを用いた切断検討へと進めた。電気泳動により期待通り、MMPの認識配列特異的な切断が確認されたため、がん細胞傷害活性試験へと進めたが、期待に反し活性の低下が認められた。プロテアーゼ消化が分子の不安定化をもたらしたと考えている。一方、半減期の長い高分子量型から高浸透型へ、すなわち高分子量型から低分子量型へのがん特異的な構造変換デザインも平行して進めた。まずFc融合Ex3をモデルに、同様にがん細胞で亢進しているプロテアーゼの認識配列のFc融合部位への導入を行った動物細胞用発現ベクターを作製した。続いて、CHO細胞に遺伝子導入を行い、抗生剤によるスクリーニング後、安定産生株を樹立した。 がん細胞傷害活性試験により、培養上清から精製したMMPの認識配列を導入したFc融合Ex3が活性を有することが確認されたため、今後より詳細な機能評価を進めると共に、市販のMMPを用いた切断検討へと展開させる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は前年度に引き続き、Db型Ex3をモデルに、がん細胞特異的に高活性型へと構造変換する新規デザインの開発を進めた。MMPの認識配列を導入したDb型Ex3の大腸菌用発現ベクターを用いた、組換え体の調製に成功し、予定通り機能評価へと進めることが出来た。MMPの認識配列を導入することによるがん細胞傷害活性の低下はみられず、また市販のMMPを用いた部位特異的な切断が確認されたため、がん細胞傷害活性試験へと進めたが、活性が向上するとの期待に反し活性の低下が認められた。プロテアーゼ消化が分子の不安定化をもたらしたと考えている。一方、半減期の長い高分子量型から高浸透型へ、すなわち高分子量型から低分子量型へのがん特異的な構造変換デザインも平行して進めた。Fc融合Ex3をモデルに、同様にがん細胞で亢進しているプロテアーゼの認識配列のFc融合部位への導入を行った動物細胞用発現ベクターの作製は予定通り進行した。しかしながら、CHO細胞に遺伝子導入を行い、抗生剤によるスクリーニング後、安定産生株の樹立を行ったが、機能評価に足る収量を得ることが出来なかった。このため、予算を繰り越して発現量の高い安定産生株を再樹立する必要が生じため、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、当研究グループが開発してきた低分子二重特異性抗体Ex3をモデルに、がん細胞特異的に高活性型へと構造変換する新規デザインの開発を目指す。今後は特に、半減期の長い高分子量型から高浸透型へ、すなわち高分子量型から低分子量型へのがん特異的な構造変換デザインを重点的に進める。前述の通りこれまでに、Fc融合Ex3のヒンジ領域に、多くのがん細胞で亢進しているプロテアーゼであるMMPによって認識される配列を導入した分子をデザインし、さらに安定産生CHO細胞株の樹立にも成功している。そこで今後は、MMPの認識配列を導入したことによる機能への影響を、フローサイトメトリーによる結合活性評価、およびがん細胞傷害活性試験により確認する。また、MMPの消化条件を検討し、切断効率の高い条件を用いて、ある程度の量の低分子量型のEx3を調製し、切断後も十分に機能を有するかを同様に評価する。さらに、MMP産生がん細胞株を用いて、がんが産生するMMPによりデザインした分子が切断されるかを評価する。抗体とがん細胞を一定時間反応させた後、培養上清、膜画分、細胞質画分等に分画し、Ex3で免役した動物から得た抗Ex3抗血清を用いたWestern blottingで切断の有無を評価する。良好な結果が得られれば、放射性同位体標識を行い、担がんマウスを用いた評価へと展開させる予定である。
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