2015 Fiscal Year Annual Research Report
サンゴ保全に向けての異分野連携によるサンゴ幼生分散距離の解明
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15H04326
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (50153838)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
御手洗 哲司 沖縄科学技術大学院大学, その他の研究科, 准教授 (80567769)
藤井 智史 琉球大学, 工学部, 教授 (30359004)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 海洋生態学 / 海洋工学 / サンゴ / 連結性 / 個体群 / 群集 / 海流輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
生態学的調査:ミドリイシ属サンゴ幼生の親からの分散距離を推定するために、沖縄県内4地域のサンゴ礁28地点において、6月の当該サンゴ放卵放精前までにサンゴ幼生定着基盤を設置、2か月後に回収し、基盤上に定着したサンゴ幼生を計数した。回収時には各地点におけるサンゴ群集調査も実施し、親サンゴの分布状況および大きさ組成と、自然に見られる幼サンゴ群体の密度を記録した。
海流輸送パターン:沖縄科学技術大学院大学が所有する位置情報を発信できるドリフターを、親サンゴが多く分布する沖縄本島西海岸、慶良間諸島、久米島を含む複数地点より投入・追跡した。これらのドリフターの軌跡から、琉球列島周辺のサンゴ礁を起点とする海流輸送経路の推定を現在行っている。現有のドリフターはその構造的に浅いサンゴ礁では使用が制限されるため、より小型のドリフターを本研究費で開発した。 また、サンゴ礁海域の海水流動測定ができる、高分解能海洋レーダの完成に向けて基本的構成法の確立と機能検証を行った。 ソフトウェア無線技術を用いてUHF帯413MHz利用のFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)レーダを構成し、その評価実験を行った。サンゴ礁海域内で120 m程度の距離分解能を確保するために、約1.2MHzの帯域幅を掃引することになるが、送信機および受信機の基本的構成法での実験から、十分レーダとして動作することは確認できた。さらに、この基礎的実験の成果を基に、アレイアンテナ処理のための8受信機構成での信号処理に関する検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生態学的調査:平成27年度はサンゴ幼生定着基盤が台風のため消失することもなく、ほぼ全てが回収でき、かつサンゴ群集調査も予定通り実施することができ、親サンゴの分布量と幼生定着量を統計モデルで解析するためのデータが揃いつつある。 海流輸送パターン:最大の懸案であった小型ドリフターのプロトタイプを7機、昨年度中に製作し、簡易な漂流試験まで終えることができた。今年度はさらなる運用試験を行う。旧来からのドリフターの解析も進め、0~100 km の空間スケールでの幼生分散を検証するに足る定量的・統計的データを揃えることができる。 サンゴ礁海域を高分解能に流動観測できることを目指した、UHF帯周波数を利用したFMCWレーダを、ソフトウェア無線技術を用いて構築できた。その結果、要求される距離分解能について、その元となる送信信号の1.2MHz帯域幅の連続周波数掃引が可能であることを示した。また、その基本的な構成を用いて送受信実験を行い、基礎的な検証が行えた。加えて、方位分解を行うためのアレイアンテナ構成において、8受信機同時信号入力時の計算負荷についての知見を得た。これを元に信号処理法の検討が開始できた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での大きな問題は生じておらず、申請時の計画に沿って今後も研究を推進する。 生態学的調査:平成27年度に実施した調査を継続しつつ、平生28年度はサンゴ幼生の供給量をより高精度に推定するために、複数の種について親サンゴの群体サイズと卵生産量の関係を野外調査と採集によって明らかにし、各地点での卵生産量を推定する。 海流輸送パターン:ドリフターによる観測だけでは、長期的かつ広域的に海流輸送パターンを推定することは不可能である。高解像度の海流モデルの完成が次の当面の目標である。島と島を結ぶ 100 km のスケールを ROMS で、同一の島でのサンゴ礁域 (1 km 程度) を Delft3D で解像すべく、開発を鋭意進行中である。最終年度にはドリフターによる海流輸送パターンの観測および海洋レーダによる表面流の観測結果をモデルによる推定結果と比較し、モデルの総合的な検証を行うことが可能になる見込みである。 レーダ開発に関して方位分解ならびに送受信機間干渉の課題を解決し、実海域での観測実験を行う。方位分解を目指して受信系をアレイアンテナで構成し、8受信機並列処理を行うための信号処理法ならびにハードウェア構成について検討を進める。連続送信を行うFMCW方式において、ダイナミックレンジ向上にむけて受信機への送信信号からの干渉を最小限にするために、ヌルビーム構成等の干渉軽減策を検討する。また、実際に海岸での観測実験を行い海面からの散乱信号を受信し、ブラッグ共鳴散乱を引き起こす海洋波浪がサンゴ諸海域でどの程度であるか検証するとともに、並行して流動場観測を実施する。
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Research Products
(3 results)