2015 Fiscal Year Annual Research Report
概日時計を介する明暗サイクル下でのシアノバクテリアの生存戦略
Project/Area Number |
15H04332
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩崎 秀雄 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00324393)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | シアノバクテリア / 概日時計 / 概日リズム / 日周適応 / kaiA |
Outline of Annual Research Achievements |
単細胞性シアノバクテリア Synechococcus elongatus PCC 7942株は,概日時計研究の最も単純なモデル生物であり,KaiA, KaiB, KaiCの三つの時計蛋白質が概日時を構成することが試験管内再構成系で示されている。混合競合培養条件下では外界周期が内在周期に近い株の増殖率が高いことが示されているが,kaiABCを欠損した変異株単独では,様々な明暗サイクル下で野生株に比べて成長が遅れるわけではない。しかし,私たちはkaiA機能欠損株では,特定の明暗サイクル下で野生株よりも顕著に成長速度が抑制されることを見出した。 ここで,明暗サイクル下の暗期には,殆どの遺伝子の発現は著しく低下する(が,翻訳後就職レベルのKaiCリン酸化・ATPase活性に見られる概日時計自体は持続する。また,kaiA機能欠損株ではkaiBC遺伝子を含め,多くの主観的黄昏時にピークを持つ概日遺伝子の発現が抑制され,概日時計は主観的夜明けの状態で停止していると考えられている。 私たちは,短日条件下では,野生株の時計は明期の終わりに黄昏遺伝子群がピークとなるように転写調節を行うことを予備的に明らかにした。これらのことから,「短日条件下では,野生株は黄昏時にピークを持つ概日遺伝子発現が明期に活発に行われるのに対し,kaiA機能欠損株では抑制される。これらの概日遺伝子発現の変化が明暗サイクル下でも生長に重要な役割を担う可能性がある」という仮説を立てた。また,分子遺伝学的には,まずkaiA機能欠損株が明暗サイクル下で生長阻害を呈する現象に関するサプレッサー変異株のスクリーニングを行い,およそ20個の変異株を分離した。これらはTn5ベースのトランスポゾン挿入変異株であり,現在その原因遺伝子の特定と分子生物学的解析を試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
kaiAのサプレッサー変異株を取得するなど,順調に成果を上げつつある。当初予定していたkaiA機能欠損株のプロテオーム・トランスクリプトーム解析に関しては,上述のように減衰振動成分の発見という,より興味深い現象を見出したため,そちらを優先させる方向で動いている。具体的には,減衰振動成分の光位相応答・温度補償性の検証,数理モデルの開発などを行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
サプレッサー変異株の原因遺伝子の特定を進めるとともに,グリコゲンなど明暗サイクル下で大きく変動する代謝産物と生長特性の相関を解析する。また,劇的なゲノムワイドな明暗応答(暗期では著しく発現が抑制されるものが大半であり,例外的に暗誘導するものもある)に関する変異株も得られつつあることから,その原因遺伝子の解明と代謝との関わりを分析していく。
|
Research Products
(8 results)