2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H04333
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
山下 朗 基礎生物学研究所, 細胞応答研究室, 特任准教授 (30312276)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 減数分裂 / RNA結合タンパク質 / 分裂酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生殖細胞形成に欠かせない減数分裂を制御する分子機構を明らかにすることを目標とし、分裂酵母の減数分裂制御において重要な役割を果たす三つのRNA結合タンパク質Mei2、Mmi1、Spo5の機能解析を進めている。Mei2は、減数分裂開始のスイッチとしての役割と、減数分裂の進行に不可欠な役割を果たすタンパク質である。Mmi1は、減数分裂期に発現するRNAの分解を誘導すると同時に、減数分裂遺伝子の条件的なヘテロクロマチン化に関与することが示されている。Spo5についても、減数分裂の進行において重要な働きをしていることが示されている。しかし、三者の果たす役割については、多くの謎が残されている。本研究では、これらRNA結合タンパク質の機能の解明を通じて、減数分裂の制御系の詳細に迫る。 Mmi1が誘導する減数分裂転写産物の選択的な分解について詳細に解析するため、一分子FISHと蛍光タンパク質を利用した生細胞観察を行って、Mmi1の標的RNAの細胞内局在を観察した。野生型株とMmi1関連因子の変異体を用いて実験を行った結果、Mmi1がRNA分解誘導とヘテロクロマチン形成促進に加えて、標的転写産物の核外排出を阻害して翻訳を抑制することで、減数分裂の遺伝子の発現を抑え込んでいることを示すデータを得た。また、Mmi1がN末端側の領域で自己相互作用しており、その領域がMmi1の機能に重要であることを明らかにした。Mmi1の自己相互作用と、RNA分解誘導や翻訳抑制との関係について、解析を継続している。 異所的に減数分裂を開始してしまい増殖不能となる活性化型のMei2変異が、細胞周期制御因子の変異によって抑圧されるという予備的な結果が得られた。この結果を詳細に検討し、Mei2の減数分裂誘導活性と細胞周期制御の関係に着目して解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予想していなかった新たな発見もあり、本年度は本研究課題の解析対象である三つのRNA結合タンパク質のうち、Mmi1の解析に重点を置いたため、Mei2とSpo5の解析については予定した研究計画を次年度以降に繰り越すことになった。しかしながら本年度は、Mmi1が標的RNAの局在制御を介して、翻訳のレベルで減数分裂遺伝子の発現を抑制しているという新たな知見を得ることができた。今後解析を進めることで、減数分裂遺伝子の発現制御についての理解が一層深まると期待される。また、Mmi1が誘導するRNA分解に関連する因子群についても、変異体を用いた解析等を行った。今回明らかとなった翻訳抑制との関わりを含め、これらの因子群の働きを明らかにしていく予定である。 Mei2に関しては、本年度の遺伝学的な解析によって、減数分裂誘導活性と細胞周期制御因子との関わりが浮かび上がってきた。この結果を足がかりとして、次年度以降結合しているRNAの探索を中心とした解析を組み合わせていくことで、未だ実体の分からないMei2の減数分裂誘導活性を明らかにしていくことができると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
Mmi1関連因子の変異体を用いて、RNA分解と、今回明らかとなった翻訳抑制の様子を、発現と転写産物の局在の両方の面で検討することで、Mmi1を中心とする減数分裂遺伝子の発現制御機構の全体像に迫る。Mmi1の自己相互作用の意義についても、自己相互作用領域への変異導入や、関連因子の変異体を用いた解析を行って明らかにする。 前年度までにMei2を精製する系が確立されてきているので、減数分裂期の細胞よりMei2を効率よく精製し、次世代シーケンサーを利用して相互作用するRNAの特定を進める。相互作用RNAが明らかになったら、それらがMei2を制御する因子である可能性と、逆にMei2がそれらのRNAを制御している可能性の両方を視野に入れて、解析を進める。特に本年度得られた細胞周期制御因子との関わりに注意を払い、解析を行う。
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Research Products
(6 results)