2015 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイドの生成・脱凝集機構の新たなパラダイム創成
Project/Area Number |
15H04345
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 元雅 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (40321781)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アミロイド / 分子シャペロン / 酵母プリオン |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの神経変性疾患では、原因タンパク質がミスフォールドし、線維状タンパク質凝集体であるアミロイドを脳内に生成する。また、酵母や哺乳動物細胞において、一定の条件下で、アミロイドはモノマーにまで脱凝集できることが示唆されている。本研究では、申請者がこれまでに構築してきた独自の酵母プリオンSup35NM-分子シャペロン実験系およびNMR(核磁気共鳴)などの構造生物学的手法を用いて、Sup35NMアミロイドの生成および脱凝集分子機構の解明を目指す。本年度は、これまでに活性に不安定さがあった各種シャペロンの精製方法に改良を加えていき、シャペロン活性がより安定するような精製法を確立させた。このシャペロン群を用いて、モデル蛋白質凝集体の脱凝集化や凝集加速効果を明らかにすることができた。また、天然変性タンパク質であるSup35NMからアミロイドが生成するメカニズムを明らかにするため、異なる二種類の酵母由来のSup35NMタンパク質を用いて、Sup35NMのアミロイド構造やアミロイドの生成機構を分光学的手法等で比較、検討した。その結果、異なる二種類のSup35NMの間で、アミロイドおよびモノマーの構造が異なることを見出した。したがって、両者でSup35NMの凝集および脱凝集のメカニズムも異なることが示唆されたため、今後、二種類のSup35NMタンパク質の間において、シャペロン群との相互作用様式の違いについて検討予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種分子シャペロンを高度に精製することができ、アミロイドの生成および脱凝集の実験に用いることができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
シャペロン群によるSup35NMモノマーの凝集加速効果の分子メカニズムを明らかにする。そのため、Sup35NMとシャペロン群の各種変異体を用いた解析を行う。また、シャペロン群の存在または非存在下で最終的に生成したSup35NMアミロイドの構造の比較をこれまでに確立してきた質量解析や各種分光法から行う。 Sup35NMモノマー、オリゴマーとシャペロンの結合様式に関しては、ビアコアによる詳細な解析を行う。一方で、Sup35NMアミロイド(N末またはC末の異なるコア構造をもつアミロイドも用いる)とシャペロンとの結合様式に関しては蛍光偏光法などを用いる。また、引き続き、15NでラベルしたSup35NMモノマーと非ラベルのHsp104, Ssa1, Sis1を混ぜ、Sup35NMモノマーのNMRシグナルの化学シフトや強度の変化を調べ、両者の結合部位の同定を目指す。 脱凝集の分子機構解明に関しては、まず脱凝集化を検出するための系の確立を目指す。ビオチンタグをもつSup35NMアミロイドをストレプトアビジンビーズに固定し、各種シャペロンを加えた後に、脱凝集化によって遊離してくるSup35NMモノマーを検出する実験系を確立させる。その確立後、異なるコア構造をもつSup35NMアミロイドやシャペロン変異体を用いて、詳細な解析を行っていく。 さらに引き続き、活性の高いHsp104シャペロンの単離を目指して、他の研究グループの精製法を詳細に再現し、精製したシャペロンの活性を現在のものと比較、検討を行う。
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