2016 Fiscal Year Annual Research Report
高速AFMによる生体膜の形状に依存したタンパク質の離合集散メカニズムの解明
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15H04360
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古寺 哲幸 金沢大学, バイオAFM先端研究センター, 准教授 (30584635)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生物物理 / 一分子計測(SMD) / 生体分子 / 走査プローブ顕微鏡 / タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに開発を進めていた、サブマイクロメートルオーダーの細孔を持ったAFM基板に関して再現性よい結果が得られるようになった。具体的には、形状のそろったポリスチレンビーズをガラス基板上に撒き、それを鋳型に熱硬化型樹脂(PDMS:ポリジメチルシロキサン)の上に細穴を得るナノインプリントリソグラフィーの方法で、非常に高価な実験装置や危険な薬品を使用することなく、サブマイクロメートルオーダーの細孔を高密度に大面積に得ることができるようになった(特許出願中)。さらに、そのPDMS上にできた細孔の上に、脂質膜を貼り、サブマイクロメートルの凹凸を持った脂質膜を形成することに成功した。また、その脂質膜に親水基がビオチン化させた脂質分子を混ぜ、ストレプトアビジンを結合させることで、脂質分子の動きモニターすることができた。これにより、脂質分子は凸面では速く、凹面ではゆっくりと拡散運動することを直接的に見出すことに成功した(生物物理学会で発表)。また、FIB(Focused Ion Beam)装置を用いて、ガラス基板の上にアレイ状の細孔を形成することに関しても手法を確立した。これまで基板上の細孔が空いた場所を見つけることが困難であったが、大規模に細孔を形成することで光学顕微鏡下で細孔の位置を識別できるようになった。また、できた細孔の上に、微小管やアクチンといった繊維状タンパク質をサスペンドさせることができるようになった(生物物理学会で発表)。 これらの実績の他にもAFM走査信号とAFMの恒温観察に関する特許を出願した。また、早稲田大学の上田太郎教授との共同研究で、アクチン結合タンパク質であるミオシンIIとコフィリンが相互排他的にアクチン繊維に協同的に結合することを見出した(論文発表)。この実験のAFM観察基板には脂質二重膜を用い、本課題研究で開発したノウハウが重要な役割を果たした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたサブマイクロメートルオーダーの細孔を持ったAFM基板の開発には、PDMSとポリスチレンビーズを用いたナノインプリントリソグラフィーの方法とFIBの方法で実用レベルまで達することができた。また、基板表面の清浄化についても、さまざまな洗浄法を試みることで大きな進展がみられた。さらに作成した凹凸を持った基板の上に脂質膜やタンパク質分子を置くことができ、脂質膜の形状に依存した脂質分子の拡散運動を見出すことに成功したことは大きな成果である。また、本課題研究で蓄積した脂質分子やAFM観察基板に関するノウハウを応用してタンパク質の機能メカニズムの理解を深められたことは大きな成果である。一方、細胞膜の形状をサブマイクロメートルオーダーで変化させるために必要な簡易的な磁気ピンセットを設計、製作し、動作の確認を行ったが、簡易的な磁気ピンセットでは基板上の磁気ビーズに十分な力を及ぼせないことが判明した。別の案を模索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに、簡易的な磁気ピンセットの開発に取り組み、数十マイクロメートルの可動範囲を持ち、かつ1 nm程度の位置精度を持ったマニピュレーターの開発に成功した。しかし、磁気ビーズに力を及ぼせるか試験したところ、ビーズと基板の非特異的な吸着が強いため、磁気ピンセットによる膜形状の変形は不可能と判断した。そこで、今年度は、圧電素子を利用して、力学的に膜変形を実現できるデバイスの開発を行う。上記で実現した細胞膜の形状を変化させることができる実験系を用いて、そこで繰り広げられるタンパク質分子などの離合集散過程を高速AFMで直接的に観察する。特に、膜の材質やジオメトリー(曲率やその規模)に応じたタンパク質の振舞いに注目しながら観察を進める。昨年度までに膜形状に依存したタンパク質分子の拡散運動の違いが見られたので、その定量化を行うとともに、バクテリアの細胞分裂に関わっているMinDに関連する現象(MinCとMinEが関わる現象)や、精製した生体膜を用いて、膜の形状に依存したタンパク質分子(クラスリンやカベオリン)や脂質ラフトなどの振舞いなどを直接的に観察することを予定している。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] Allosteric regulation by cooperative conformational changes of actin filaments drives mutually exclusive binding with cofilin and myosin2016
Author(s)
Ngo, K. X., Umeki, N., Kijima, S. T., Kodera, N., Ueno, H., Furutani-Umezu, N., Nakajima, J., Noguchi, T. Q., Nagasaki, A., Tokuraku, K., Uyeda, T. Q.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 35449
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Structural polymorphism of actin filaments: its implication in regulation of actin binding proteins and cell motility2016
Author(s)
Uyeda, T.Q.P., Ngo, K.X., Noguchi, T.Q.P., Nagasaki, A., Kodera, N., Tokuraku, K.
Organizer
第54回日本生物物理学会年会
Place of Presentation
つくば国際会議場
Year and Date
2016-11-25 – 2016-11-27
Invited
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