2017 Fiscal Year Annual Research Report
Analysisis of a novel gibberellin signaling pathway through calcium
Project/Area Number |
15H04392
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高橋 陽介 広島大学, 理学研究科, 教授 (90183855)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 植物 / 信号伝達 / 転写調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジベレリン(GA)は植物の成長に顕著な促進作用を示す植物ホルモンである。GA受容体GID1がGAと結合すると、GA信号伝達の抑制因子DELLAタンパク質とE3の結合が促進され、DELLAがユビキチン-26Sプロテアソーム系により分解される。その結果、DELLAにより抑制されていた転写因子PIFが転写を促進し、GA信号が伝達されると考えられる。 しかし、上記モデルでは説明できない現象も知られている。例えば生理学的な実験によりGA依存的に細胞内カルシウムイオン濃度が上昇することが明らかにされているが、GA信号伝達のスイッチとされるDELLAの分解との関連は不明である。本研究ではカルシウムイオン依存的なGA信号伝達系を解析し、既知のGA信号伝達経路との統合的理解を目的とした。 昨年度までの解析によりGAはDELLAの分解を介さずカルシウムイオン濃度の上昇を引き起こすと考えられた。細胞内信号伝達は最終的には遺伝子発現の変化に帰着する。シロイヌナズナのDELLAをコードする遺伝子は5つ存在する。もしDELLA非依存的なGA信号伝達経路が存在するなら、della五重変異体においてもGAは遺伝子発現に影響を与えるはずである。そこで本年度はdella五重変異体にGAを投与した時、発現が変動する遺伝子を、次世代シーケンサーを用いて探索した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルシウムセンサータンパク質をdella五重変異体において発現させた形質転換植物を用いた解析によりGAはDELLAの分解を介さずカルシウムイオン濃度の上昇を引き起こすことが示された。DELLA非依存的なGAによる転写制御系が存在するか次世代シーケンサーを用いて解析した。その結果、della五重変異体においてもGAに応答する候補遺伝子が得られた。 カルシウム依存性タンパク質リン酸化酵素(CDPK)はカルシウムのセンサーで、GAによるカルシウム濃度上昇により直接活性化される。キナーゼの機能はリン酸化により制御されることが多い。これまでの研究からNtCDPK1の自己リン酸化は基質認識に影響を与えることが明らかになった。またNtCDPK1は二量体を形成するので、NtCDPK1の自己リン酸化が分子内リン酸化反応なのか、分子間リン酸化反応なのかを酵素活性に必須なAsp-219をAsnに置換した変異型NtCDPK1を用いて調べた。その結果、NtCDPK1の二つの自己リン酸化部位のうち、Ser-6は分子間反応でもリン酸化されThr-21は分子内反応でのみリン酸化される事が判明した。 興味深い知見が得られているので、全体としての達成度はほぼ順調と考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
カルシウムセンサータンパク質を発現させた形質転換植物を用いた解析によりGAはDELLAの分解を介さずカルシウムイオン濃度の上昇を引き起こすと考えられた。GAによるカルシウム濃度の上昇はDELLAの分解に先行するので、カルシウム濃度の上昇がDELLAの分解に関与する可能性が考えられる。そこで次年度はカルシウムチャネル阻害剤を用いてカルシウム濃度の上昇を抑制した状態で、GAによるDELLAの分解への影響を調べる。解析にはDELLAの一つRGAとGFPとの融合タンパク質を発現する形質転換体を使用する。 これまでGAの信号伝達は核内に存在する受容体GID1がDELLAのユビキチン化を促進することで始まると考えられてきた。そこで本年度はGAによるDELLA非依存的なカルシウム濃度の上昇がGID1を介するのかを調べる。シロイヌナズナのgid1三重変異体にカルシウムセンサータンパク質を導入した形質転換体を作製し、GA投与によりカルシウム濃度の上昇が観察されるか調べる。
|
Research Products
(13 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 植物生理学概論2017
Author(s)
桜井英博、柴岡弘郎、高橋陽介、小関良宏、藤田知道
Total Pages
246
Publisher
培風館
ISBN
978-4-563-07825-6
-