2016 Fiscal Year Annual Research Report
ユーラシア中央部・南部でのヒグマ多様性変遷の探求と北海道ヒグマ三系統の起源解明
Project/Area Number |
15H04410
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
増田 隆一 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80192748)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大舘 智志 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60292041)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ヒグマ / ユーラシア / 多様性 / 起源 / 系統地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、これまでヒグマの系統地理的特徴が十分に解明されていないユーラシア中央部・南部・バルカン半島等におけるヒグマを対象としてその分子系統地理学的特徴を調査分析することである。さらに、北海道に見られる3系統のヒグマの起源を解明するも目標である。本年度は、母系遺伝するミトコンドリアDNAの系統地理的特徴と父系遺伝するY染色体DNAの分子系統地理的特徴に着目して研究を進めた。 その成果として、バルカン半島に位置するブルガリアにおける古代ヒグマについて、ミトコンドリアDNAのAPLP法(amplified product length polymorphism)を適用したところ、ユーラシアのヒグマハプログループの西系統に分類されることが明らかとなった。さらに、ミトコンドリアDNAコントロール領域の部分配列について、遺伝子増幅(PCR)産物ダイレクトシーケンス法によって決定し分子系統関係を解析したところ、現在のバルカン半島に分布するヒグマ系列と同系列であった。さらに古代ヒグマにおいて塩基配列の多型を見出した。 また、父系遺伝子から北海道ヒグマの起源を探求するため、Y染色体DNA塩基配列に基づいた分子系統解析を行ったところ、北海道のヒグマ集団とユーラシア大陸ヒグマ集団との間に遺伝的分化があることが見出された。しかし、北海道内での地域変異は小さいものであった。これはオスの広い行動範囲に起因するものであり、母系遺伝するミトコンドリアDNAの分子系統地理学的特徴とは異なっていた。 以上の成果は現在、投稿論文としてまとめているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はヒグマY染色体DNAの分子系統学的解析の成果をまとめることができたため、現在、投稿準備中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在分析中の成果をまとめるとともに、新しい標本の収集と分析を継続する。 また、ヨーロッパ産ヒグマのミトコンドリアゲノム情報がデータベースに公表された際には、私たちの従来のデータと比較解析し、ユーラシア全体のヒグマについて単一塩基多型を検出できるAPLP法を開発する。それにより、より広い地域のヒグマ集団についてハプログループを分類し、系統地理的研究を推進できるようにする。
|