2015 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム情報と生育域外保全集団を活用した生物多様性ホットスポットの保全研究
Project/Area Number |
15H04414
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井鷺 裕司 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50325130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
邑田 仁 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90134452)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生物多様性ホットスポット / 保全ゲノミクス / 生物多様性保全 / 絶滅危惧種 / 小笠原諸島 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題ではプロジェクトの全期間を通して、小笠原諸島に生育する多くの希少固有植物のうちで「絶滅の恐れのある野生動植物の保存に関する法律」で指定されている9種と、本土に生育する希少種の近縁種を対象に、網羅的なゲノムレベルの大量遺伝情報解読を行い、より適切かつ効果的な生物保全を達成することを目的とする。 平成27年度は固有希少種としてキク科アゼトウナ属のコレラナレン、ツツジ科ツツジ属のムニンツツジ、シソ科キランソウ属のシマカコソウを解析対象とした。それぞれの種について次世代シーケンサーによる大量遺伝情報解読によってSSRマーカーを開発し、小笠原に野生生育するほぼ全個体の遺伝子型解読を行った。 その結果、コヘラナレンは残存個体数は少ないものの、集団内に遺伝的多様性が保持されていることが明らかになり、また、集団間の遺伝的分化も認められた。ムニンツツジに関しては野生個体と生育域外個体すべてが同一の遺伝子型を示した上に、すべての遺伝子座において一つの対立遺伝子に固定していることが明らかになった。このことは、ムニンツツジは少数個体のみで世代交代を繰り返してきたことを意味しており、人為によって小笠原諸島の環境が変化する以前より個体数が少なかったものと思われる。シマカコソウは遺伝的多様性が低く、入手できた個体の多くがクローンであることが判明したが、ムニンツツジとは異なり、各遺伝子座には複数の対立遺伝子がヘテロ接合していた。個体数の減少が比較的近年に起こったことや、高い無性生殖能力がこの様な遺伝的特徴をもたらしたと考えられる。 以上のように、それぞれの種ごとに固有の遺伝的状況が明らかとなったが、その情報は、環境省の保護増殖事業計画にも取り入れられ、適切な保全活動に活用される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた小笠原産希少固有植物3種について詳細な遺伝解析を行うことができた。それぞれの種ごとに固有の遺伝的状況にあることを明らかにし、その成果は環境省の保護増殖事業計画にも取り入れられるなど、生物多様性ホットスポットにおける希少植物保全にも活用される見込みが立ったことは評価できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、予定通り年間3種の小笠原産希少固有植物について、次世代シーケンサーによる大量遺伝情報解読によるゲノムレベルの詳細な遺伝解析を行う。また、本土の近縁普通種についても解析を進め、小笠原産希少固有植物の遺伝的特性やデモグラフィーについて比較解析によって明らかにする。
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Research Products
(3 results)