2015 Fiscal Year Annual Research Report
島嶼環境における捕食者・被食者の共進化と個体群動態の相互作用
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15H04426
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
長谷川 雅美 東邦大学, 理学部, 教授 (40250162)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 捕食者 / 被食者 / 進化動態 / 島嶼環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、伊豆諸島のオカダトカゲとシマヘビを被食ー捕食者系のモデルシステムとして用い、効果的な捕食と捕食回避に作用する迅速な進化が、捕食者と被食者の個体群動態を駆動するメカニズムの実証解明を目指している。さらに、捕食者と被食者間の迅速な共進化と個体群動態の相互作用が適応形質の地理的な分化とその維持に果たしてきた役割を評価し、適応進化と個体群動態の相互作用に関する総合的な理解に達することを目指している。3年間を通しての具体的な目標は、以下の3項目である。 1)捕食者(シマヘビ)の色彩型頻度の振動が個体数振動の周期に及ぼす影響とそのメカニズムの解明、2)シマヘビのゲノム配列を解読し、そこから色彩型を規定する遺伝子を特定し、そのうえで色彩型の多型維持に作用する自然選択の分子レベルでのシグナルの解読、3)生態学的時間スケールでの自然選択が捕食者と被食者の個体群動態にフィードバックされるメカニズムの解明
H27年度は、1)捕食者(シマヘビ)の色彩型頻度の振動が個体数振動の周期に及ぼす影響とそのメカニズムの解明と2)ゲノム解読のためのライブラリー作成に主に取り組んだ。ゲノム解読の作業は、途中段階のため、本報告では、シマヘビの色彩型を周期的に振動させる仕組みとして、オカダトカゲがシマヘビの色彩型を学習し、捕食を回避すことによる負の頻度依存性選択が作用するという仮説検証に取り組んだ。そのため、捕食者シマヘビの有無とシマヘビの色彩パタンが異なる複数の島嶼個体群を対象とし、異なる色彩パタンを塗布したシマヘビモデル(粘土模型)をオカダトカゲに提示し、視覚的捕食者認知機構が地理的に分化しているかどうかを検証する野外実験を行った。その結果、オカダトカゲは同所的に生息する捕食者の色彩にのみ反応を示し、オカダトカゲの視覚的捕食者認知が、シマヘビの色彩多型維持のメカニズムとして作用する可能性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
捕食者の色彩多型の維持メカニズム仮説として提案した負の頻度依存性選択は、被食者による捕食者の色彩型の視覚的認知とその学習が成立することが大前提である。1年目の野外実験において、この前提を立証できたことは大きな前進であった。ゆえに、研究計画はおおむね順調に進展していると自己評価を下した。
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Strategy for Future Research Activity |
野外調査:伊豆諸島の4島(伊豆大島、新島、神津島、八丈小島)を対象とし、シマヘビとオカダトカゲの標識・再捕獲調査、形態測定、野外での行動実験を継続する。得られた標識・再捕獲データから、表現型質の異なる個体ごとに自然選択の有無、方向性、選択の強度を検出するための解析を行う。 ゲノム解析に関しては、引き続き九州大学の柴田准教授との共同研究として、H27年度に作成したライブラリーを用いて、次世代シーケンサを用いた配列解読に取り組む。
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Research Products
(5 results)